今日は記憶についてお話します。
「30年以上前の事を覚えているのに、どうしてさっき食べた事を忘れているの?」
記憶に関して不思議に思う事はありませんか?
記憶には、沢山の分類や種類があり、実は認知症になっても影響を受けにくい記憶もあります。
まずは記憶の2つの分類についてご紹介します。
●時間による分類
①即時記憶→数秒~1分程度 直後に再生される記憶
例)電話番号を復唱する、質問にその場で答える
②近時記憶→ 数分・数時間~数ヶ月 その間別の刺激が入る。
※一般的に『短期記憶』と呼ばれることもあります
例)今朝食べた物を昼に思い出す
③遠隔記憶→ 数年~数十年前
例)学生時代の出来事を大人になって思い出す
例えば、アルツハイマー型認知症の場合、②の近時記憶が低下しやすく①や③は比較的長く保たれます。みなさん、昔の事は皆さん良く覚えていらっしゃいますよね。
●内容による分類
①エピソード記憶
例)昨日遊びに行った 等の出来事
②意味記憶
例)地球は丸い 等の知識
③手続き記憶
例)楽器演奏 等の身体で覚える技能
アルツハイマー型認知症の場合、①のエピソード記憶が低下しやすく②や③は比較的長く保たれます。この様に、記憶の中で低下しやすいものと保たれるものがある理由は、脳の主な保存場所が異なる為です。
アルツハイマー型認知症で、低下しやすい近時記憶、エピソード記憶は『海馬(かいば)』という場所が関与します。
海馬はとても繊細。酸素不足で脳がダメージを受ける時も影響を受け易い場所であると言われていますし、感情との関連も強くストレスにも脆弱。
高性能かつ繊細な機械の様です。また、年齢により避けられない低下もあります。
●認知症の人における記憶の活用ポイント4つ
では次に認知症のある方が日常生活で、今ある記憶を生活に活かす為の4つのポイントについて説明します。
①慣れているかどうかを優先する→遠隔記憶、手続き記憶の活用
例)今の携帯電話が使えているなら、高齢者向けの「らくらくフォン」に無理に変えなくても良い
②置き場所を決める(模様替えをしない)→遠隔記憶、手続き記憶の活用
例)目につきやすい場所に決め、出かける際も決まった動線で準備ができる
③ルーティンを作る→手続き記憶の活用
例)起床→洗濯→朝食→散歩→洗濯物を干すなど、行動パターンを作って流れを体で覚える
④趣味をやめない→手続き記憶の活用
例)楽器演奏、社交ダンス等 体で覚える事が技能となり楽しめる趣味を積極的に続ける 趣味を通し仲間と交流する
このような工夫ができます。
私達が日ごろ臨床でお会いする方の中には、認知機能検査の点数が低くても、生活での問題は小さい方がおられます。このような方は、上に挙げた記憶の活用が上手な方とも言え、脳の『予備能力が高い方』といえます。
脳の予備能力は、若い時からの習慣の積み重ねで作られますので、認知症が無い方やお若い方にとっても大切な考え方です。
良ければ参考にしてみてくださいね。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。