認知症ケア専門士によるコラム

認知症と、においの関係

作成者: 日本テクトシステムズ株式会社|Dec 3, 2024 9:24:13 AM

こんにちは。

 

今日は『臭い』のお話です。

認知症に関係のある脳機能といえば、記憶力低下が代表的ですが、実は記憶より遥か前に低下するのがにおいを識別する『嗅覚』です。

嗅覚の低下は認知症の10年〜20年も前に始まると言われています。

においは、まず鼻の奥の嗅覚受容体という場所で感知され、その後、神経繊維を経て、脳の嗅内皮質(きゅうないひしつ)という所で、『どんなにおい』が識別されます。

 

アルツハイマー型認知症の原因と考えられている異常たんぱくが最初に蓄積する場所が、ここ嗅内皮質と言われています。この嗅内皮質は記憶を司る『海馬』に近い場所に位置し、そこから異常タンパクが海馬へと広がる事で記憶低下に至ると言われています。


私が過去に行った研究では、アルツハイマー型認知症の方々の『長谷川式認知機能スケール』の点数と『嗅覚検査』の点数に中等度の相関がみられ、中でも、「臭いはするけど、何のにおいか分からない」といった、においを識別する段階において、認知症のある方は、大きく低下する事が分かりました。

このように、認知症の重症度を評価する意味でも、嗅覚はひとつの目安となるといえます。

認知症の介護をされているご家族から、「食べ物が腐っているのに食べてしまったのはなぜ?」「頭が臭っているのに、お風呂に入らないのはなぜ?」という質問をされます。

これは認知症が嗅覚障害を伴っている事も一因といえ、「臭ったらわかるでしょ」というのは、残念ながら効果がないといえます。

 

アルツハイマー型認知症だけでなく、パーキンソン病やレビー小体型認知症も、嗅覚障害を呈する認知症として有名です。

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。