今日は『人の顔の認識』について考えます。
︎ 妻にどちら様ですかと言われた
︎ 息子を見て夫だと言った
︎ 看護師さんを見て姪っ子だと言った
一般的にも人の顔を見間違えることはありますが、ご家族に間違えられると、『私の事を忘れたの?』と驚いてしまいますよね。
高齢者や認知症のある人が、顔を見間違える3つの理由
①記憶障害
高齢になると、最近の事より昔の記憶が強くなり、ご自分やご家族の年齢を実際より若く認識している場合が多くあります。例えば久しぶりに会った息子さんに『どなたですか?』と尋ねる人の脳の中では、
目の前に男性がいる➡息子に似ているが息子はもっと若いはずだ➡夫にも似ている?➡間違えたら失礼聞いてみようという思考が働いている可能性があります。
この様な誤りは認知症の後期や超高齢期などで見られる事がありますが、毎日会っている間柄より、久しぶりにあった人に対して、一次的に見られる事も多いです。
②相貌失認
相貌失認とは、目や鼻等、顔のパーツは知覚できても、顔全体から個人を識別する事が難しくなる症状です。
顔を見て誰か分からないだけでなく、家族を他人だと思ったり、他人を家族だと思いこむ『替え玉妄想』を伴う事もあり、ご家族にも影響が大きいと言えます。
このタイプの見間違いはレビー小体型認知症の方に起こることがあります。
③個人差+年齢
過去に海外の有名な俳優さんが、自らの相貌失認を告白しました。相貌失認は認知症だけでなく人口の2%と意外と多く、顔を見分ける力には元々個人差があります。
普段は視覚情報(顔、表情、髪型、体型)のみならず、聴覚(声、話し方)などあらゆる感覚情報を統合して識別を行うため支障は無いですが、元々人の顔を視覚的に識別するのが、苦手な方が、他の感覚機能が低下する事で、間違い易くなったり、相手の外見や環境が変化すると分からない事もあるでしょうか。
この様に様々な理由がありますが、特に長年連れ添ったご家族においては、すくなくとも存在自体を忘れてしまった訳では無いと、ご理解頂けたかと思います。
では、間違えられた際どの様に対応すれば良いでしょう
1.強く否定し納得するまで説明
2.昔の写真を見せながら丁寧に説明
3.傾聴し一度その場を離れる
4.先に自己紹介する
ここでは1以外の対応をお勧めします。
強く否定する事は、どんな対応をとっても好ましく無いですがこの場合も同様です。
ご本人も間違いをつきつけられショックですし、納得されない場合もあります。
説明するなら、2の方が良いですが、強く思いこまれている場合は3の様にその場を離れ仕切り直す方が良い事もあります。
また『私の事誰だかわかる?』という質問は、ご本人が試されていると感じたり、誤りを助長させる懸念からよくありません。先回りケアの視点で4.の様に正しい情報を伝える方が良いでしょう。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。