認知症ケア専門士によるコラム

嫉妬妄想について | 認知症ケア専門士によるコラム

作成者: 日本テクトシステムズ株式会社|Feb 24, 2025 3:00:00 PM

今日は認知症の付随症状、BPSD(行動心理症状)の一つ「嫉妬妄想」についてのお話です。
このタイプのBPSDは取られ妄想に比べると頻度としては少ないのですが、ご本人もご家族も苦痛に感じやすいことが特徴的と言えるでしょうか。

「嫉妬妄想」とはその名の通り「嫉妬」がメインの症状です。

パートナー間で見られるのですが、浮気していないのに「浮気している!」と確信してしまい、大きなトラブルを生んでしまうのです。
誘発される原因は様々で、今までのパートナー間の関係性に依るところもあります(実際過去にパートナーが浮気をしていた事実がある場合もあり、そのことを潜在意識の中に押し込めていたり等)。
ですが、その様な事がない方でも、異性間での接触(デイサービスの送迎、ご近所さんとの立ち話など)が契機となり、妄想が膨らんでしまう事があるのが実情です。
いくら認知症の症状といってもこれはつらいですよね。
ではどうしたら妄想が落ち着くのでしょうか?

ご存じの方も多いかと思いますが、認知症治療には①薬物治療と②非薬物治療があります。
その両輪がうまく廻ることで症状が安定して行きます。
嫉妬妄想は初めての受診でご相談いただくことが多いので、内服治療が開始されていない方が殆どです。内服で症状が落ち着かれる場合があります。適切な薬剤選択がなされれば有効です。薬剤はいくつか種類がありますので、症状に合わせて薬剤を選択していくことになります。どんな些細な事でも構いませんので、受診時に先生に相談してみてください。
 
次に非薬物治療についてです。
この「妄想」は不安から生じることが多いとされています。つまり、この不安を取り除く、軽減することで症状の軽快に繋がります。
この場合不安を取り除くとは「置いて行かれる」「取り残される」ことを指す場合が多いのですが、パートナーにとって大事な存在だと気づいて頂くことが近道です。実際はしていないのに、謝ってその場を収めるというやり方は妄想を肯定し、症状を助長してしまうことがある為避けてください。
「否定しない」ことはケアにとって大切です。とは言え、毎日の生活の中では理想論だけではうまくいきませんよね…時には離れることも必要です。離れることで症状が軽快することもありますので、ご検討ください。

ご本人とのやり取りの中で、嫉妬妄想の症状でお悩みの方から直接ご相談いただくことは少なく、家族からの相談でお話を伺うことが多いのですが…
ご本人(認知症患者さん)がパートナーに
「浮気するなんて許せない!一生許さない」と直接訴える場合は、「そんな風に思わせてしまったんだね。気を付けるね」と言うようなお答えいただき、続いて他に注意が向くような声掛けをしていただけるとよいかと思います(例:このお菓子美味しいから一緒に食べよう等)。
先ほどもお伝えした通り、事実に反しているのに、誤ってその場を収めようとすることは避けてくださいね。
また、押し問答が続くと、両者ともにストレス過多となりますのでお気をつけください。

日々ケアに励んでいる皆様、お疲れ様です。
わずかな時間でも構いませんので、自分を労わる時間を設けてくださいね。

 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。