「冷蔵庫にヨーグルトが5パックもある」
「食べる人がいないのに、毎日揚げ物を購入する」
アルツハイマー型認知症の方と暮らすご家族にとって、このような場面に遭遇することは少なくありません。今日は、日々の買い物において、アルツハイマー型認知症の方が同じものを購入する理由と、その対応について考えていきます。
また、アルツハイマー型認知症は女性に多く、長年ご家庭の中で食事の準備を担っていた方であれば、「家族が食べる物がなくなったら困る」と、なかった時のリスクを優先することが購入に拍車をかけることもあります。
次に、これらに関する対策について、認知機能の状態別に考えていきます。
健常のもの忘れ〜MCI(軽度認知障害):買うべきものを、毎回スマホや手書きの同じメモに書く習慣を反復します。この際、使用するメモや方法をコロコロ変えない事が重要です。最近では、 スマート冷蔵庫といって、扉を開けずにスマホから冷蔵庫の中身が確認できる機能や、アプリを用いた賞味期限の管理機能等もありますが、こういった新しい便利ツールは、認知症になる前のこの時期から導入されることをお勧めします。
初期認知症:この時期は、書いたメモを紛失してしまったり、スーパーでメモを見ながら買い物をすることが難しいことが見られ始めます。複雑なメモではなく、「~は買わない。」と大事な事を1つ書いて、買い物に行く際に手渡すなど、シンプルな方法であれば活用できる事もあります。また、店舗側に事情を伝え、過剰購入しそうな場合のみ店員が本人に伝えるよう協力を求めたり、買いすぎたものをフードバンクに寄付したりする方法もあります。
中期認知症:中期の認知症になると、メモは活用困難です。同じものの購入だけでなく、買い物前後で住み慣れた場所で道に迷ったり、スーパーには行けても、支払いに困難をきたす等、買いすぎ以外の課題が併発することもあるでしょう。
それでも買い物に行くことがご本人にとって大きな楽しみで意義を持つ場合は、ヘルパーさんやご家族と一緒に買い物に行ったり、ご家族が頼んだ通販を本人が受け取って、ヘルパーさんと一緒に冷蔵庫に入れる等、部分的に参加して頂く方法も良いでしょう。
苦手なことに対して健常者の視点で考える対応は、認知症のある人にとって新たに身に着けることが難しいものが大半です。本人を変えるというよりは、その時期に過不足ない支援をしながら、安全を守り、生活の質を維持していくという考え方が大切です。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。