こんにちは。今日は、認知症の中でも特にアルツハイマー型認知症の人に見られやすい「取り繕い」について取り上げます。
「今日は何月何日かわかる?」→「最近新聞見ていないから・・・」
「食事しなかったの?」→「もうこの年だから、食が細いのよ」
このようなやりとりに心当たりがある方はいらっしゃいませんか?
認知症における取り繕いで最も多いのは、実際に忘れていたり、意欲低下で行わない事柄について、別の理由付けをしてやり過ごそうとすることです。主に記憶障害や認知機能の低下による困難を、周囲に気づかれないようにするための無意識的な心理的防衛反応ともいえます。
取り繕い反応は特にアルツハイマー型認知症で多く見られる現象です。熊本大学の研究によれば、アルツハイマー型認知症の人の半数以上に取り繕い反応が見られ、レビー小体型認知症や軽度認知障害の人と比べて有意に多いことが報告されました。記憶障害が強く出る一方で、初期には思考や判断力が比較的保たれているため、自分の失敗や忘れたことを「悟られたくない」と感じて取り繕う傾向が強くなります。
取り繕いは、もともとの性格やプライドの高さ、社会的な立場へのこだわり、不安や羞恥心の強さとも関係があります。
自分の変化を受け入れがたく、周囲に弱みを見せたくないという心理が強い人ほど、取り繕いが出やすいとされています。一方、もともと自己開示されやすく、失敗や物忘れを素直に認められる人は、アルツハイマー型認知症でも取り繕いが目立たない場合もあります。
認知症が進行すると、取り繕い自体がみられなくなることがあります。逆に初期段階で「自分は何か以前と違う」と漠然と気付いているものの、それを疾患的症状と受容していない時期だからこそ、取り繕いが強く出やすい傾向があります。
先にも述べたように、認知症の人が取り繕いをする背景には、相手に悟られたくない、自尊心を保ちたい、不安を消し去りたいといった気持ちが隠れています。
このため、取り繕いを頭ごなしに否定したり、間違いを強く指摘したりすると、そこから言い争いに発展したり、本人の不安や孤独感が強まる懸念があります。
対応のポイントとしては、取り繕いだと気付いても、まずは「そうなんだね。」と、気持ちを受け止め、その場で深く掘り下げないことです(掘り下げる事が更なる取り繕いを助長する懸念があるため)。
そして、取り繕いの内容が、例えば内服管理のような健康に支障をきたす場合においては、視覚的な確認ツールなどを導入し失敗しない環境を整えていくことに注力して頂ければと思います。
認知症の人に対して、言葉で説明をして理解を促すのではなく、状況を受け止めた上で失敗しない環境作りを行うこと視点が大切かと思います。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。