今日は「食」についてお話しします。認知症はその進行とともに、日常生活レベルで支障を来すことが増え、食事も例外ではありません。
「生きることは食べること」
大切な問題です。認知症で起こりうる食の問題について、いくつか項目に分けて考えます。
原因の一つとして、脳の視床下部の働きが悪くなり、食欲が低下する事があります。また、口腔内の感覚過敏や味覚の変化で食欲が停滞してしまうことも。反対に食欲が増進する過食も見られます。
食事量の減少・拒食に対しては…
・食べられるものを食べられるときに。食形態の調整や、味のメリハリをつける
・食事に集中できる環境を作る→TVは消す
・食事場面の設定→食事場面の変更、個食を減らす
過食に対しては…
・1日の総カロリー量変えず、回数を分ける
・食後、食器をすぐには片づけない→空の食器を見て確認
・食事中も会話を楽しむ→食事時間の認識を
・1日に食べてもOKな量以外は手の届かない所に
異食、誤食、誤飲は、食べ物ではないものを口に入れてしまう行為を指します(紙やティッシュ、植物、ボタン、電池、磁石など)。生の肉をお刺身と勘違いして食卓に並べてしまった事例もあります。異食の原因としては、食べ物とそうでないものの区別がつかなくなることや、空腹感による影響が。
また、嚥下機能の低下(飲み込む力、感覚低下、歯科の不良)が原因で、食べ物が気管に入ってしまう誤嚥のリスクも高くなります。食事量が落ちる、頻繁にむせる・痰が絡む、微熱が続くなど見られた場合は早めに医療機関を受診してください。肺炎を併発している場合があるので注意が必要です。
異食を防ぐためには、危険なものを手の届かない場所に置く、食事の回数を増やして空腹を感じにくくする、生活リズムを整えるなどの対策が有効です。
誤嚥に対しては、脳梗塞や脳出血など脳卒中の影響に加えて、口腔顔面の筋力低下がリスクとして挙がります。手軽にできる方法としては、ご家族やご友人とたくさんお話をすることかと思います。
ものの認知が難しくなるというだけではなく、失行という症状から、使用用途に合わせた食器の選定が難しくなることがあります。平皿で牛乳を飲む、カップにごはんをよそうなど。
「牛乳を注いで」とお願いをするよりも、コップを渡して「(コップに)牛乳を注いで」とお願いするとエラーは防げます。声かけ一つで反応が変わる事がありますので、「こそあど言葉」を多用せず、明確にお伝えいただくとよいかもしれません。
また、箸の利用が難しくなる場合は、フォークで代用するか、手づかみで食べられるもの(おにぎり、サンドイッチなど)にするのも良いでしょう。
抑制障害により、食事のスピードが加速してしまう傾向があります。また、注意の影響から一皿以外には意識が向かずに、同じお皿ばかり食べ続けてしまう様子もみられます。
食形態を一口大に調整する、お皿に盛る量を調整する、ワンプレートにする、声掛けをするといった注意喚起や環境調整で改善することがあります。
長くなってしまいましたが、安全に楽しい食事をしていただくために、皆様工夫してみてくださいね。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。