もの忘れ外来に来られるご家族から、
「元々空気を読むのが苦手なので、発達障害だと思います」
「元々人の話を聞かない人なので、認知症か発達障害かわかりません」
といったご相談を受けることがあります。
“発達障害”という概念が一般に広く知られるようになったからこそのご相談と感じていますが、実際の臨床現場でも、発達障害と認知症は、一部の症状が似て見えることがあります。
まず診断の場において、発達障害と認知症を鑑別する際には、“これまでの人生の経過”が大切です。
1. 昔からそうだったのか
2. 元々傾向はあったが、最近になってより目立ってきたのか
3. 以前にはなかった変化として現れているのか
これらは、発達障害と認知症の2つを見極めるうえで重要な視点です。
さらに、その後の経過の中で、症状の進行がみられるかどうかも、認知症を考えるうえで重要なポイントになります。
ここで少し発達障害について考えてみます。
発達障害には、ご存じの様に自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などがあり、これらは、生まれつきの脳機能の特性によって、物事の感じ方や考え方、情報処理の仕方に“偏り”や“特徴”がみられる状態です。
生活場面では、
・ 予定変更が苦手
・ 強いこだわりがある
・ 忘れ物が多い
・ 人との距離感が独特
など、さまざまな特徴がありますが、発達障害は「スペクトラム(連続体)」ともいわれるように、正常との境界はとても曖昧です。
特性があっても、仕事や家庭環境、周囲の理解など、その方に合った環境を選択し適応されて目立たなくなっている場合も多くあります。その特性を生かして、専門職やその道のスペシャリストとして活躍されている方も少なくありません。
しかし、高齢期になり、
・ 配偶者との死別
・ 身体機能の低下
・ 脳の虚血性変化
など、本人のみならず周囲の環境が変化することで、これまでの特性が“生活上の困りごと”として表面化してくることがあります。その結果、認知症のように見える場合や、実際に認知症を合併することもあります。
診察では、「いつ頃から」「どのような変化が」「どのくらい進行しているのか」を丁寧に伺うことが、より正確な診断につながりますので、その点をお話し頂ければと思います。
そして、ケアや生活支援の視点で発達障害と認知症の2つを考えると、
・ 発達障害だから問題ない
・ 認知症だから支援が必要
という単純な話ではありません。
認知症でなくても、“暮らしの困りごと”があるという意味では同じ。
実際に、発達障害の特性がある高齢者に対して、認知症ケアの視点から環境調整を行うことで、生活の質が向上する場面は多くあります。
例えば、
・ お薬カレンダーで薬を見える化する
・ スケジュールに対して事前にリマインドを行う
・ 介護保険でヘルパーを導入し、苦手な部分をサポートする
などの工夫によって、生活上の困りごとが改善するわけです。
「その人の特性が、どのような環境で困りごととして現れているのか」を考えるという意味では、認知症ケアも、発達障害支援も、共通なのかもしれませんし、“疾患を超えて、その人自身をみる視点”を社会の中に広げていくことは、認知症の共生社会を実現するために大切なのではないでしょうか。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。