Dementia・MCI

認知症・MCIについて

What Is Dementia

認知症とは?

認知症とは、通常は慢性もしくは進行性の脳疾患によって見当識、注意、記憶などの認知機能に障害が生じ、日常生活に支障をきたした状態をいいます。
我が国では現在、85歳以上の人の4人に1人が認知症といわれており、認知症は重要な問題となっています。
認知症の原因となる疾患は100以上あります1)。その主なものとして、アルツハイマー病、レビー小体病、血管性疾患、前頭側頭葉変性症などが知られており、様々な状態を引き起こします 。

1)徳丸ほか(2018):Alzheimer病以外の認知症のMRI.画像診断,38(9): 897-911.

  • 1.中枢神経変性疾患
    • Alzheimer型認知症
    • 前頭側頭型認知症
    • Lewy小体型認知症/Parkinson病
    • 進行性核上性麻痺
    • 大脳皮質基底核変性症
    • Huntington病
    • 嗜銀顆粒性認知症
    • 神経原繊維変化型老年期認知症
    • その他
  • 2.血管性認知症(VaD)
    • 多発梗塞性認知症
    • 戦略的な部位の単一病変によるVaD
    • 小血管病変性認知症
    • 低灌流性VaD
    • 脳出血性VaD
    • 慢性硬膜下血種
    • その他
  • 3.脳腫瘍
    • 原発性脳腫瘍
    • 転移性脳腫瘍
    • 癌性髄膜症
  • 4.正常圧水頭症
  • 5.頭部外傷
  • 6.無酸素性あるいは低酸素性脳症
  • 7.神経感染症
    • 急性ウイルス性脳炎(単純ヘルペス脳炎,日本脳炎など)
    • HIV感染症(AIDS)
    • Creutzfeldt-Jakob病
    • 亜急性硬化性全脳炎・亜急性風疹全脳炎
    • 進行麻痺(神経梅毒)
    • 急性化膿性髄膜炎
    • 亜急性・慢性髄膜炎(結核,真菌性)
    • 脳腫瘍
    • 脳寄生虫
    • その他
  • 8.臓器不全および関連疾患
    • 腎不全,透析脳症
    • 肝不全,門脈肝静脈シャント
    • 慢性心不全
    • 慢性呼吸不全
    • その他
  • 9.内分泌機能異常症および関連疾患
    • 甲状腺機能低下症
    • 下垂体機能低下症
    • 副腎皮質機能低下症
    • 副甲状腺機能亢進または低下症
    • Cushing症候群
    • 反復性低血糖
    • その他
  • 10.欠乏性疾患,中毒性疾患,代謝性疾患
    • アルコール依存症
    • Marchiafava-Bignami病
    • 一酸化炭素中毒
    • ビタミンB1欠乏症(Wernicke-Korsakoff症候群)
    • ビタミンB12欠乏症,ビタミンD欠乏症,葉酸欠乏症
    • ナイアシン欠乏症(ペラグラ)
    • 薬物中毒
      • A)抗癌薬(5-FU,メトトレキサート,シタラビンなど)
      • B)向精神薬(ベンゾジアゼピン系抗うつ薬,抗精神病薬など)
      • C)抗菌薬
      • D)抗痙攣薬
    • 金属中毒(水銀,マンガン,鉛など)
    • Wilson病
    • 遅発性尿素サイクル酵素欠損症
    • その他
  • 11.脱髄疾患などの自己免疫性疾患
    • 多発性硬化症
    • 急性散在性脳脊髄炎
    • Behçet病
    • Sjögren症候群
    • その他
  • 12.蓄積病
    • 遅発性スフィンゴリピド症
    • 副腎白質ジストロフィー
    • 脳腱黄色腫症
    • 神経細胞内セロイドリポフスチン[沈着]症
    • 糖尿病
    • その他
  • 13.その他
    • ミトコンドリア脳筋症
    • 進行性筋ジストロフィー
    • Fahr病
    • その他
日本神経学会「認知症疾患ガイドライン2017」より

日常臨床では、今の状態が認知症なのか、認知症ならどのタイプなのかについて、問診と種々の検査結果を総合して診断を行います。
これを臨床診断と言い、一般的には、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症…というように“〇〇型認知症”と表わされます。一方、亡くなってから脳を直接みる病理診断では、認知症は複数の原因による“複合的な疾患”であることが報告されています。
つまり、同じ診断名であっても、人によってその原因や状態、進行の仕方は異なり、適切な治療法も異なるのではないかと考えられます。そこで、一人一人の状態や治療効果を把握するための検査が重要となります。

(日本神経学会「認知症疾患ガイドライン2017」を一部改変)

Inspection

認知症の人、一人一人の状態を知るための検査

代表的な検査として、次のようなものがあります。

神経心理検査

認知機能の状態を客観的に知るために行われます。検査によって目的が異なります。

  1. 認知症が疑われるかどうかを調べる検査(スクリーニング検査):HDS-R(Hasegawa Dementia Scale-Revised:長谷川式とも呼ばれます)、MMSE(Mini-Mental State Examination)がよく使われます。
  2. 特定の認知機能を詳しく調べる検査:記憶について調べるWMS-R(Wechsler Memory Scale-Revised)、遂行機能について調べるBADS(Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome)など様々な検査があります。
  3. 経過を把握するための検査:認知機能の変化を計測し薬効を評価する唯一の検査としてADAS(Alzheimer’s Disease Assessment Scale)があります。

検査は、保たれている機能と苦手になっている機能を知ることにより、治療・支援・生活の工夫に役立てられます。また、経過を把握するための検査は、定期的に行うことにより、状態の変化や治療の効果を具体的な数値で表します。

頭部MRI検査

認知症の原因となる脳の病変や形態異常などを検出するために行われます。撮像方法を変えることにより、様々なものをみることができます。

  1. 脳の形態をみる:脳構造の奇形や脳の萎縮について知ることができます。
  2. 脳の病変をみる:脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などの病変の有無を知ることができます。
  3. 脳の血管の状態をみる:脳動脈瘤、脳動脈硬化、脳動脈の狭窄や閉塞などの有無を知ることができます。

血液検査

認知症に影響する身体の疾患や状態の異常を検出するために行われます。

  1. 糖尿病、脂質異常症などの内科疾患
  2. 感染症
  3. ビタミン、葉酸などの各種欠乏症


これらの検査を早期から定期的に行い、自分のデータを蓄積することにより、今後どうなっていくかの未来予測の精度が上がります。

What Is MCI

MCIとは?

MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)とは、以前に比較して、本人もしくは家族など本人をよく知る第三者から認知機能低下の訴えがあり、検査で1つ以上の領域の認知機能障害が認められるが、日常生活は自立している状態をいいます。つまり、正常であるとも認知症であるともいえない中間の状態です。

MCIと診断された人のうち年間10~30%が認知症に進行すると言われており、認知症の前段階として注目されています。近年では、記憶障害だけでなく、それ以外の遂行、注意、言語、視空間認知などの機能障害を主とする様々なタイプのMCIがあると考えられています。

(日本神経学会「認知症疾患ガイドライン2017」を、厚生労働省老健局「認知症施策の総合的な推進について」令和元年6月20日を参照して一部改変)

Life

認知症時代を生きる

認知症・MCIの有病率

2013年の報告2)によると、この時点での我が国の65歳以上の人の認知症有病率は15%と推定されています。つまり、
65歳以上の人の約7人に1人が認知症ということになります。また、認知症にMCIを加えると、約4人に1人となります。

年齢が上がるにつれて、認知症・MCIの有病率は上がっていきます。

2)朝田隆(2013)厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業 都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応 平成23年度~24年度

認知症・MCIの有病率

(朝田隆(2013)より作図)


将来どのようになっていくかについての研究も行われています。上記のデータを元に将来予測を行った報告によると3)、我が国の認知症の有病率は、2030年には65歳以上の人の20.1%に達すると予測されています。つまり、65歳以上の人の約4人に1人が認知症ということになります。また、認知症にMCIを加えると、65歳以上の人の約3人に1人となります。
もはや、認知症・MCIになることは他人事ではなく、自分の問題として考える時代です。

3)木之下徹(2013)神崎恒一:病・診・介護の連携による認知症ケアネットワーク構築に関する研究事業 研究分担報告書:病・診・介護の連携による認知症ケアネットワーク構築のための基本的理念と実践への示唆 ―スコットランドの先進的取り組みと認知症・MCIの将来推計の世界的推移から―

認知症・MCIの有病率の将来推計

(木之下徹(2013)より作図)



認知症に備える

今や「人生100年時代」4)を迎えつつあります。
一方で、年を重ねるほどに認知症・MCIのリスクが高まることが分かっています。
認知症時代ともいえるこの時代を、私たちはどのように生き抜けばよいのでしょうか?

4)R.グラットン・A.スコット著,池村 千秋訳「LIFE SHIFT」東洋経済新報社,2016.




認知症であるということについて、認知症の専門医・繁田雅弘医師は、次のように語られています。

"診断の前後で大きく生活が変わってしまう方がいらっしゃいます。診断を受けるまでは病人の生活じゃなかったのに、病人の生活になってしまう。その瞬間に身体の健康を失うということはあり得ないのに。“認知症を中心にした生活”ではなくて、その前からやっていたこと、認知症があろうがなかろうがやってみたかったことをやっていって欲しいのです。"

(2019年第20回日本認知症ケア学会「認知症という希望」大会長挨拶の言葉)

のぞみメモリークリニックホームページ「繁田医師の講演「認知症があろうとなかろうと」


また、認知症当事者の一人であるクリスティーン・ブライデン氏は、その著書で力強い言葉を記しています。

"病気を変えることはできないが、自分の態度は変えられる。"
"今の自分とこれからなっていく自分のイメージを、新しく作る必要がある。それをどう作るのかは、性格、人生経験、健康、精神性、社会的環境によって大きく異なる。私たちは自分の態度を選べるのだ。"

クリスティーン・ブライデン著,馬籠~クリエイツかもがわ,2012.より



私たちは、たとえ限られた状況であっても最大限に快適に過ごしたい。
そのために私たち一人一人が、自分のために、大切な誰かのためにできるのは、認知症・MCIに早期に気づくこと。それによってより良く生きる術を見出していくことではないでしょうか。



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