株式会社ディー・エヌ・エー(東京都渋谷区、代表取締役社長:岡村 信悟)の子会社である日本テクトシステムズ株式会社(東京都港区、代表取締役社長:坂野 哲平、以下 日本テクトシステムズ)らの研究チームは、医療機関における認知機能チェックツール「ONSEI」の分類精度※を調査し、その成果を国際科学雑誌「Cureus」で報告しました。
※分類精度(正解率)は、機械学習モデルの性能を評価する重要な指標の一つです。この指標は、モデルによる予測が実際の正解とどれだけ一致しているかを示します。具体的には、正しく予測されたデータの数を、評価に使用された全データの数で割った値です。
<研究の背景>
認知症は、ご本人の生活だけでなく、そのご家族や社会にも大きな影響を与えます。これまでの研究では、認知機能障害の早期発見と早期介入が重要であると言われています。
日本テクトシステムズは、約20秒の発話内容と声の質、年齢をもとに、認知機能の変化を簡単に知ることができるアプリ「ONSEI」を開発・提供しています。本研究では、医療機関における「ONSEI」の分類精度を評価することを目的とし、臨床診断と「ONSEI」による分類結果との一致度を調査しました。
<研究の内容と成果>
相武台脳神経外科、はまと脳神経クリニック、鈴木脳神経外科において、本研究の参加者のうち1,097人は認知的健常(認知的健常群)、489人は認知症(認知症群)と診断されました。各医療機関での「ONSEI」の分類精度はそれぞれ97.8%, 98.8%, 93.3%でした。また、参加者全体における分類精度は98.1%と高い結果を示しました。
参加者の年代に応じた「ONSEI」の分類精度の違いも調査しました。 70代と80代の参加者が多かったため年代分布に偏りがありましたが、各年代における分類精度は概ね90.0%を超えていました(図1)。
図1 各年代の分類精度と参加者数
黄色の線は、分類精度を示します。 青と赤のバーは、それぞれ正分類された参加者数と誤分類された参加者数を示します。
これらの結果から、「ONSEI」は、検査施設や参加者の年齢に関わらず、医療機関において認知的健常群と認知症群を高い精度で分類できることが明らかになりました。「ONSEI」は短時間で簡単に利用可能であるため、家庭や地域社会など様々な場所でセルフチェックツールとしての活用が期待されます。
本研究成果は、国際科学雑誌「Cureus」に2024年4月22日に掲載されました。
【論文情報】
雑誌名 | Cureus |
題名 | Actual Clinical Practice Assessment: A Rapid and Easy-to-Use Tool for Evaluating Cognitive Decline Equivalent to Dementia |
著者 | Takayuki Asano, Asako Yasuda, Setsuo Kinoshita, Jun Nomoto, Takahiro Kato, Chihiro , Suzuki, Han Suzuki, Toru Kinoshita, Masahiro Shigeta, Akira Homma |
DOI | 10.7759/cureus.58781 |
URL | https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38784298/ |
■認知機能チェックツール「ONSEI」について
「ONSEI」は、今日の日付や曜日に関する簡単な質問に声で答えることで、認知機能の変化を簡単にチェックできるアプリです。このアプリでは、質問への回答内容、声の質、および利用者の年齢をもとに、AIが認知機能の変化を解析します。チェックの開始から結果の表示まで、約20秒という短時間で完了するため、日常的に気軽に使うことが可能です。ONSEIは、企業や自治体、医療機関等、様々な場でご利用いただいています。