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お客様の声
2019年12月19日

患者さんを褒めるには客観的な点数が重要な情報。 褒めることが患者さんの自信にもつながっていきます

ばんどうクリニック
板東 邦秋 院長

認知症診療に取り組んだ経緯

 大学病院では、頭蓋内圧や脳脊髄液循環動態が専門でしたが、水頭症の臨床と研究にも携わっていました。その後、藤沢市民病院において正常圧水頭症の臨床研究をしている中で、全般的な認知症疾患について学ぶことが出来ました。数年後に開業に至ったのですが、正常圧水頭症へのシャント手術をもっと普及させていきたいという想いで「正常圧水頭症」と他の認知症の鑑別をしっかりとやっていくべきだと考えていました。しかし、実際に診療してみると、水頭症のみならず、アルツハイマーを含む認知症患者が想像以上に多数存在するという現実に直面し、こういった認知症患者全体をもっとしっかり治療しなければいけないという思いに駆られ、認知症専門医資格を取得し、本格的にこの疾患群に取り組むようになりました。
 当院では、MRI、CTを完備し、認知機能検査としてMMSE、長谷川式、MOCA-Jなどの簡易検査のみならずADASも実施しているので、認知症診断に関しては、当院のみでほとんど完結することが出来ています。SPECTや脳波に関しては近隣の基幹病院と連携して実施しております。

認知機能検査に対する考え方

 SHINRI-ADASについては、順天堂大学の田平先生からご紹介いただいたことが導入のきっかけとなりました。SHINRI-ADASを使うと臨床検査技師や心理士も必要なく、医師が実施しなくてもADAS検査が可能だということでさっそく導入しました。当院では、トレーニングを受けた看護師やスタッフにやってもらい、大体1回30分程度で実施しています。検査件数は1日8件程度で予約制をとり、受付で対応しています。
 ADASは点数化によって認知症の状態を定量的に評価することが出来、特にアルツハイマー型認知症の薬剤の効果や重症度の経過をみるためには絶対に必要な検査だと思っています。新薬などの臨床治験でも必須になるくらい実績のある検査です。当院ではADASに加えて時計描写や計算(Serial7’s)なども実施することで、患者さんの状態を多面的に評価しています。
 ADASは基本的にはアルツハイマー型に対応した検査法だと思いますが、レビー小体型認知症であっても、いわゆる「コモンタイプ」では記銘力低下や見当識障害が先行して出現し、アルツハイマー型認知症に似た症状を呈しますので、経過観察には有用だと思っています。当院では、認知症疑いの新規患者には全員実施しています。ADAS実施により、結果が点数で見られ、経過中の変化が分かるので、患者さんやご家族も理解しやすく、評価が高いです。高度で専門的な検査というイメージもあるようです。経営面でも、450点の診療報酬が取れるので有意義に感じています。
 私は治療方針として、認知症の患者さんをできるだけ褒めるように心がけています。褒めるためには客観的な情報が重要となります。治療評価としてADASの2,3点は重大な差ではないかもしれませんが、少しでも点数が改善した場合にはとにかく褒める。変化がなくても、悪くなってないと褒める。多少低下してもまだまだ大丈夫だと元気づける。ご家族にもできるだけいいところを見つけてとにかく褒めるように指導しています。褒められるとどんな重症の患者でも自信につながり、これが認知症の悪化予防につながります。

医療連携の大切さについて

 旧来の医療介護の体制は医師を頂点として、その下に看護師、テラピスト、さらにその下にその他のコメディカルや介護士やといったピラミッド型の指示系統になりがちでしたが、もはやこのような構造は時代遅れの産物となっています。今日では「ピラミッド型からフラットテーブル型へ」医療体制をパラダイムシフトさせるとことが要請されています。フラットテーブルとは、医師、歯科医師、薬剤師、その他のコメディカル、介護関係者、場合によっては患者家族がおのおのの立場から対等に意見を交換して、互いに協力して患者の症状改善や環境整備につとめることと定義します。 認知症ケアに関しては、私自身がコメディカルや介護関係者から学ぶことが多々あります。医師とコメディカルが連携しあい治療に当たる「キュア」と、介護やリハビリ、リクリエーション等を通して症状を緩和し悪化しないようにする「ケア」の両方を同時に行っていくことが重要だと考えております。
 また、在宅の認知症患者のBPSDの悪化や急性疾患合併により入院を要する際、患者を受け入れてくれる病院が少ないことも問題です。多くのかかりつけ医が認知症治療に積極的に関わりたがらない原因がこの部分にあるのではないでしょうか。私も、いくつかの救急病院や高齢者を受け入れる一般病院の院長先生に働きかけて連携体制構築を推進してきました。しかし、現実にこれらの連携体制が機能するには、トップの院長だけではなく、現場で直に患者と接する勤務医や看護師の認知症への理解や対応力向上が必須です。そのために、彼らに対しての啓蒙の機会を作ることが必要だと感じています。

今後の認知症診療のあり方について

 今後は認知症を予防することが大事になってくると思います。認知症の予防には有酸素運動と知的活動の習慣化、ソーシャルネットワークと生活習慣の改善が重要だと考えております。アルツハイマー型認知症の原因の一つにアミロイドβ(Aβ)という異常タンパクの脳実質内蓄積があげられます。Aβは認知症発症の20年以上も前から蓄積が始まりますが、その蓄積には生活習慣が大きく関わってくるため、青壮年期からの生活習慣の改善が不可欠になってきます。生活習慣の改善は健康長寿を目指す「アンチエイジング」にもつながることですので、早いうちから食事・運動・睡眠に関して良い生活習慣を心がけ、過剰なストレスを回避し、仕事や趣味、社会貢献などを通して社会との交流を深め、家族や友人とのコミュニケーションを密にすることが、健康長寿の獲得と認知症予防にとっては最も大切であると考えています。

ばんどうクリニック
板東 邦秋 院長

板東 邦秋 院長
経歴:日本医科大学医学部卒業
   順天堂大学、バージニア医科大学留学、藤沢市民病院
  
資格:日本脳神経外科学会 認定医
    日本認知症学会 専門医・指導医
    日本脳卒中学会専門医
    日本アンチエイジング学会 専門医・認知症サポート医
    神奈川県身体障害者申請 指定医・医学博士

ばんどうクリニック

ばんどうクリニック
住所:神奈川県横浜市泉区和泉町514-8
標榜:脳神経外科、内科、整形外科、神経内科、在宅療養支援診療所
休診:木曜・日曜・祝祭日

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