認知症ケア専門士によるコラム

治療が可能な認知症 | 認知症ケア専門士によるコラム

作成者: 日本テクトシステムズ株式会社|Apr 14, 2025 3:00:01 PM

認知症の原因となり、尚且つ治療が可能な脳のご病気、「慢性硬膜下血種(まんせいこうまくかけっしゅ)」をご存じでしょうか? 

 

私達の脳は頭蓋骨で守られています。

頭蓋骨と脳の間には、いくつかの膜があり層を成していますが、その膜のひとつが硬膜(こうまく)。硬膜の内側に血種がたまる事を「硬膜下血種」といいます。 

硬膜とその内側の膜との隙間は狭い為、血腫がゆっくり、じわじわと溜まっていく事から「慢性硬膜下血種」と言われています。

 

慢性硬膜下血腫の原因は様々な物がありますが、多くは頭部外傷によるものです。

転んで、頭を床や机の角などにぶつけた衝撃がきっかけとなり、じわじわと血腫が溜まり、1~数ヶ月後に症状が出る場合があります。 

血種は脳の左右のどちらかに溜まりますが、両側に溜まる場合もあります。

 

慢性硬膜下血種の症状としては、ぼんやりして眠そう、元気がないといった全体的なご様子に始まり、手足に力が入りにくい、歩くのが遅くなる、転びやすい、物忘れの悪化 言葉が出にくくなる、トイレの失敗(尿失禁)が目立つ 等様々です。 

 

勿論症状の強さは人によりますが、これらは血腫が脳を圧迫する事で、その場所が担う機能的な低下が起こるために見られます。

 

慢性硬膜下血腫の診断には、頭部CTやMRI等の画像検査を行います。

画像検査で、血腫が少なく症状が生活に支障の無い場合は、定期的な画像検査で様子を見る場合もありますが、血腫が多く症状が強くある場合や、経過と共に血腫が増える場合等は、外科的手術を行います。

 

手術は局所麻酔で行われ、頭蓋骨に小さな穴を開けて血腫を除去します。

術後は、数日~1週間程度状態を観察し、CTで再発がないことが確認できれば退院となります。 

 

血腫を抜く事で手術直後から症状が回復していく為「治療可能な認知症」と呼ばれますが、実際の臨床現場では、元々認知症がある方が転んで、慢性硬膜下血腫を合併する場合もあります。

そのような場合は、治療後に再度転倒しないための環境調整が大切です。

 

慢性硬膜下血腫は、私たちのクリニックでも、時々見つかるご病気です。

緩やかな変化だと、ご家族も気づきにくいかも知れませんが、転んだエピソードや、「最近元気がない?歩き方が変わった?」等、何らかの変化や違和感を感じられたらご相談くださいね。

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。