治療が可能な認知症
2025.04.15

認知症の原因となり、尚且つ治療が可能な脳のご病気、「慢性硬膜下血種(まんせいこうまくかけっしゅ)」をご存じでしょうか?
私達の脳は頭蓋骨で守られています。
頭蓋骨と脳の間には、いくつかの膜があり層を成していますが、その膜のひとつが硬膜(こうまく)。硬膜の内側に血種がたまる事を「硬膜下血種」といいます。
硬膜とその内側の膜との隙間は狭い為、血腫がゆっくり、じわじわと溜まっていく事から「慢性硬膜下血種」と言われています。
慢性硬膜下血腫の原因は様々な物がありますが、多くは頭部外傷によるものです。
転んで、頭を床や机の角などにぶつけた衝撃がきっかけとなり、じわじわと血腫が溜まり、1~数ヶ月後に症状が出る場合があります。
血種は脳の左右のどちらかに溜まりますが、両側に溜まる場合もあります。
慢性硬膜下血種の症状としては、ぼんやりして眠そう、元気がないといった全体的なご様子に始まり、手足に力が入りにくい、歩くのが遅くなる、転びやすい、物忘れの悪化 言葉が出にくくなる、トイレの失敗(尿失禁)が目立つ 等様々です。
勿論症状の強さは人によりますが、これらは血腫が脳を圧迫する事で、その場所が担う機能的な低下が起こるために見られます。
慢性硬膜下血腫の診断には、頭部CTやMRI等の画像検査を行います。
画像検査で、血腫が少なく症状が生活に支障の無い場合は、定期的な画像検査で様子を見る場合もありますが、血腫が多く症状が強くある場合や、経過と共に血腫が増える場合等は、外科的手術を行います。
手術は局所麻酔で行われ、頭蓋骨に小さな穴を開けて血腫を除去します。
術後は、数日~1週間程度状態を観察し、CTで再発がないことが確認できれば退院となります。
血腫を抜く事で手術直後から症状が回復していく為「治療可能な認知症」と呼ばれますが、実際の臨床現場では、元々認知症がある方が転んで、慢性硬膜下血腫を合併する場合もあります。
そのような場合は、治療後に再度転倒しないための環境調整が大切です。
慢性硬膜下血腫は、私たちのクリニックでも、時々見つかるご病気です。
緩やかな変化だと、ご家族も気づきにくいかも知れませんが、転んだエピソードや、「最近元気がない?歩き方が変わった?」等、何らかの変化や違和感を感じられたらご相談くださいね。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

医療法人バディ 認知症部門部長
前田 順子(言語聴覚士・認知症ケア専門士)
2005年から都内の急性期病院に言語聴覚士として勤務。認知症疾患医療センター内での、入院ケア、認知機能検査、認知症カフェの運営等、認知症のある方やご家族のケアに携わった豊富な経験をもつ。
2020年より医療法人バディにて認知症部門立ち上げ。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。ICTを活用した居宅支援「オンライン認知症ケアプラス®」、スターバックスとのコラボによる認知症カフェ「ウェルビーイング☆カフェ鎌倉」等の企画・運営を担当。

医療法人バディ https://buddymedical.jp/
2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。