せん妄について

2025.04.22

検査場面において、直近で入院された方々やショートステイをご利用になられたご家族に「せん妄と言われたことはありませんでしたか?」とお伺いすることがあります。ご本人よりご家族様にお伺いすることが多いのですが…。

せん妄、皆様ご存じでしょうか。

せん妄とは「身体疾患に伴う急性発症の一過性の意識障害であり、認知機能低下をともなう。また、感染や手術の侵襲などを契機に発症することが多い」とされています。
加齢に伴いせん妄のリスクは上がるため、特に高齢の方で問題となりやすいのです。
せん妄の発症機序についてはいまだ不明なところが多いのですが、単一因子ではなく、多因子が複雑に組み合わさって起こると考えらえています。

ではせん妄とは実際どのような症状が起こるのか見て行きましょう。

せん妄とは、先ほどお話しした状態に加えて、睡眠障害、幻覚や妄想などの精神症状や興奮などに伴う運動抑制などの症状も認められます。
急激な環境変化や疼痛、長期の寝たきりや行動制限などがせん妄を引き起こしやすく、急な入院では目立つことが多いのです。
一方定義されている通り「一過性」のもので、多くは発症前と同じ状態に戻るのですが、せん妄発症が退院後の長期的な予後や認知機能に大きく影響するという報告も多数見られていますので注意が必要です。

ではせん妄を予防するにはどのようにしたらよいのでしょうか。

一般的には以下が推奨されています。
① 睡眠リズム、生活リズムを整える。
② 日時の感覚を整える(近くにカレンダーや時計を置いておく。今日は何月何日?とクイズ形式にすると混乱するので、入力に留める)
③ できる限り普段と同じような環境を作る
④ 不快症状をなくす(便秘や疼痛など)
①②④に関しては、普段から意識をしておくことで急な入院などでもリスクを減らすことができますね!

③に関しては、入院時にはなかなか難しいとは思いますが、普段から利用しているものなどを持参するなどして様子を見てください。

病院や施設などでは、入院時に看護師から入院前生活の聴取や、せん妄のリスク管理のための評価が実施されているところも多いです。

認知症とせん妄は一見混同されやすいですが、正しい知識を持って、可能な範囲でリスク因子を減らし、予防できるのとよいですね。

 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。


廣島先生

医療法人バディ 認知症部門副部長 

廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。