認知症と老年期うつ病
2025.08.19

皆様こんにちは。
今日は認知症と老年期うつ病について少しお話しできればと思います。
初期の認知症の方で「うちの人は本当に認知症なのかしら?」「どちらかというと「うつ」なのではないか?」とご相談をお受けすることがあります。
この鑑別、実はとっても難しいとされています。なぜ難しいかといいますと・・・
- うつ病と認知症に、類似ないしオーバーラップした臨床症状があること(仮性認知症等)
- 認知症に抑うつ状態が高率に合併すること
- うつ病から認知症への移行が多いこと
等が挙げられます。
またアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症ではうつ症状が合併することが多いと言われています。
(ちなみに、仮性認知症とは、うつ病の症状や薬の副作用などが原因で大脳の前方に位置する「前頭葉」の機能不全が引き起こされ、注意力や集中力、さらに判断力、記憶力の低下により一見認知症のように見える状態です)
では、認知症と、老年性うつの違いをご説明したあと、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症とうつとの関連について見て行きましょう。
まずは、老年性うつと認知症の相違点についてです。
★病状の発症・進行/ 気分のおちこみ/ もの忘れ/ 妄想/ 日内変動★で比較してみます。
【老年性うつ】
- 死別等「出来事」で発症することが多い
- 落ち込み多く、強い
- 自覚あり
- 心気妄想、罪業妄想、貧困妄想
- 明け方調子が悪く、夕方からよくなる
【認知症】
- 徐々に進行
- 人によっては初期に落ち込みあるが、少ない
- 自覚なく、取り繕いを多く認める
- ものとられ妄想
- 日内変動なし
では次に疾患ごとの違いについて見てみましょう。
アルツハイマー型認知症は記憶障害が中核。近時記憶が障害されるため、再生(思い出す)のみならず、再認(ヒントで思い出す)も難しい状態です。一方、うつ病では注意力、集中力の障害に加えて想起障害を認めるために記憶の再生は難しいですが、再認は可能です。また、反応速度は初期のアルツハイマー型認知症では低下しませんが、うつ病では早期に低下します。
レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症以上にうつ病との親和性が高く、認知機能障害や幻視、パーキンソニズム(パーキンソン病ではないが、症状が近似する)等の中核症状が明らかになる前から抑うつ症状がみられるため、病初期の鑑別がより困難になります。ただし、レビー小体型認知症では寝言や手足のバタつき等のレム睡眠症状や嗅覚症状が現れやすいとされており、このあたりで鑑別が可能となります。
今回は老年性うつと認知症について簡単にお伝えしましたが、鑑別はやはりなかなか難しいのが実情です。「うつ」なのか「認知症」なのか気になる方は、「認知症」ではないと否定されることで、心療内科や精神科への受診ご紹介につながることもありますので、医療機関にお気軽にご相談ください。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

医療法人バディ 認知症部門副部長
廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)
都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

医療法人バディ https://buddymedical.jp/
2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。