原発性進行性失語
2026.01.27
最近言葉が出てこない、喋りたいのに言葉が突っかかる、単語の意味が分からない。このような症状が先行して現れる認知症がある事をご存じですか。
短期記憶が障害される=認知症と思われがちですが、今日は、言葉が出にくい認知症=「原発性進行性失語」についてお話します。
原発性進行性失語とは、病理学的なものではなく、臨床学的な背景を元に提唱されている概念で、3つの亜型に分けられます。以下、個別にご紹介します。
進行性非流暢性失語(PNFA)
「言葉がしゃべれない」「話す言葉がゆっくりになった」という訴えで気づき、来院されることが特徴です。極初期であれば、長谷川式簡易知能評価スケールやMMSEといった認知機能検査では高得点を示すことが多く、発見が遅れるケースもあります。
この疾患の特徴としては、発話が「たどたどしくなった」と表現するとわかりやすいかもしれません。理解は比較的良好ですが、発話面の支障が初期より目立ちます。進行性非流暢性失語は前頭側頭型認知症を背景病理にしている事があり、症状の進行とともに、動作が緩慢になる・振戦などの身体症状や、切り替えができない・脱抑制といった社会行動上の問題がみられることがあります。
意味性失語(SD)
これは読んで字のごとく、言葉の「意味」がわからなくなる病態です。加齢に伴い「あれ・それ・これ」が多くなることがあり、これだけでは判別が難しいことがありますが、知っているはずのものも頭の中では???「『ハシ取って』っていわれたけど、ハシってなんだっけ?」といった感じです。
こちらは進行性非流暢性失語とは異なり、発話は流ちょう。復唱や文法理解も問題ありません。また、発語以外の特徴的な症状として、漢字の読みに現れることがあります。「海老」「七夕」「土産」など、特徴的な読み方をする漢字では、「海老=かいろう」「七夕=しちゆう」「土産=どさん」と誤って読むことがあります。
意味性失語の背景としては、前頭側頭型認知症の報告が一番多いもののPick病(進行が速い)やアルツハイマー型認知症も報告されています。進行に伴い、意味記憶障害の範囲が拡大することにより発話量の減少、脱抑制・常同行動(同じ行動を繰り返す)などの社会行動が顕在化することがあります。
ロゴペニック型認知症(LPA)
「言葉が出ない」「あれ・これ・それ」が多くなった、が主症状。これだけ書くと意味性失語と同じに思われますが・・・。意味性失語との相違点としては、言葉がうまく出なくとも、意味の理解は良好です(「箸取って」と言われれば、箸を渡すことができるなど)。また、発話は流ちょうですが、文の長さが長くなることでの復唱は困難といった症状がみられます。言葉が出づらい為、発話速度が遅く感じられることもありますが、文法での誤りは見られません。
背景疾患はアルツハイマー型認知症であることが多いため、進行とともに記憶障害が顕在化することがあります。一方、背景に前頭側頭型認知症が指摘されることもあるため、経過は注意深く追っていく必要があるかと思います。
これらの症状は見逃されることが多く、発見までに時間がかかる事があります。
失語症に限らず、家族の「いつもと違う」という違和感はとても大切です。言葉に関してはリハビリが有効になりますので、取り越し苦労でも構いません、ぜひお近くの医療機関にご相談ください。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。
医療法人バディ 認知症部門副部長
廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)
都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。
医療法人バディ https://buddymedical.jp/
2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。
