認知症ケア専門士によるコラム

人と話さなくても生活できる社会:会話が減る社会と認知機能の維持について

作成者: 廣島真柄先生|Jun 9, 2026 12:00:00 AM

少子化、核家族化、独居、リモートワーク、SNS社会、セルフレジの増加、置き配など、私たちの生活環境は年々大きく変化しています。この変化は今後さらに加速し、より“コンパクトな社会”へ向かっていくことが予想されます。

 

そして私は、このコンパクトな社会がコミュニケーションにもたらす影響が、実はとても大きいのではないかと考えています。臨床の場では「認知機能の維持に最も大切なのは人との関わりです」とお伝えしていますが、その大切な関わりが現代社会では自然と減ってしまう状況です。これはつまり、認知機能を支える土台そのものが揺らぎ始めているということではないかと危惧しています。

 

 

なぜ会話が認知機能の維持に重要なのか

会話は、単に言葉をやり取りするだけではなく、脳のさまざまな働きを同時に使う活動です。相手の話を理解し、自分の考えを整理し、適切な言葉を選んで伝える。その過程では、特に前頭葉が大きな役割を果たします。さらに、会話には感情も伴うため、記憶や意欲にも影響を与えます。つまり、会話は日常の中で自然に行える立派な脳トレなのです。

この「会話」が少なくなると、孤独感の増加、認知機能の低下、生活リズムの乱れなど、さまざまな変化がみられるようになります。

 

 

私たちの生活の中で、実際にはどのように会話が減っているのか?

気づかぬうちに、声を出す機会は驚くほど少なくなっています。

たとえば、買い物。少し前は店員さんとの「袋いりますか?」「今日は寒いですね」などの短いやり取りが、自然な会話のきっかけになっていました。しかし今はセルフレジが主流になり、誰とも話さずに買い物が完結することが多くなりました。配達も置き配が増え、玄関先で「ありがとうございます」と言う機会すら減ったような気がします。

リモートワークもしかり…。 オンライン会議は必要なことだけを話して終わるため、雑談が生まれにくい状況。 職場での「お疲れさま」「ちょっといいですか?」といった、短いけれど大切なやり取りがなくなっていきます。

 

こうした小さな変化の積み重ねが、実は脳にとっては大きな変化なのです。

会話が減ると、まず「語想起」(必要な言葉を思い起こすこと)が落ちやすくなります。 言いたい言葉がすぐに出てこない、説明がうまくまとまらない。そんな経験が増えていきます。さらに、感情の調整にも影響が出ます。人と話すことで自然と整っていた気持ちが、うまく切り替えられなくなるのです。

そして何より、会話が減ると「生活のリズム」が乱れやすくなります。人と関わる予定がない日は、起きる時間も、食事の時間も、外に出るタイミングも曖昧になりがちです。これは高齢者だけの話ではありません。年齢に関係なく誰にでも起こりうる変化ですので、気を付けておく必要がありそうです。

 

 

どうすればこの「静かな変化」に飲み込まれずにすむのでしょうか

大切なのは、会話の『長さ』よりも『きっかけ』です。長く話すことだけが重要ではありません。1日1回、誰かと3分話すだけでも脳はしっかり働きます。 店員さんとの一言、家族との雑談、近所の人への挨拶。こうした小さな会話が、前頭葉にとっては大きな刺激になります。

 

会話相手?そんなにいないよ?とおっしゃる方には、声を出すことがお勧めです。

声を出すことは脳に良い影響を与えます。独り言でもOK!「今日はいい天気だな」「次は何をしようかな」 そんなつぶやきでも、脳は「言語を使った活動」として働きます。

それでもやっぱり人と関わりたい!気兼ねなく話ができる友人が欲しいと思われる方も多いかもしれません。趣味などのサークル活動だけでなく、今は友人を作るためのサークル活動もあるようです(←この間TVで活動を見ました📺)

会話機会の減少がニッチな産業として生まれている事実にも驚きです!!

 

 

目まぐるしく変化する社会の中で、不必要なものが削られ、便利さが追求される中にあって、会話の機会はより少なくなることが予想されます。

意識して声を出したり、人とかかわる事がこれまで以上に大切です。普段からできることを積み重ねて、変化に負けない地盤を作りましょう♪

 



 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。