COLUMN

コラム

認知症の薬、どうも副作用が強くて…

ご家族に電話で様子を確認

ご家族に電話で様子を確認

今回は認知症の薬の副作用についてお話ししましょう。
副作用が出た場合、薬をやめれば大抵収まります。その後、どうしても薬を続けたい場合には、いったん用量を下げて副作用の出ないようにして、体を慣らせば、また元の用量に戻せる場合が多いです。
そのため、当院では全員ではありませんが、薬を初めて飲んだ翌日から2週間、何度か電話を入れさせてもらっています。
こうした対処をすることで、かなり高い割合で、副作用が出ていったんやめても、徐々に用量を戻すことに成功しています。
萩原惣一郎(仮名)さん、80歳とその奥さん、真理(仮名)さん、72歳との、診察室での話をご紹介します。薬の副作用によりいったん薬を中断した後のやりとりです。

真理さん 「先日は電話をありがとうございました」
「あれからは大丈夫ですか」
真理さん 「今のところ、主人は気持ち悪いなんて事はなく、食欲も戻りました」
「よかったですね。まだ有効用量ではないのですが、暫く、半分で体を慣らしましょう。2、3か月したら、前回の用量に戻すことを一緒に検討しましょう」

具体的な薬の副作用

具体的な薬の副作用

私はアリセプトという薬を惣一郎さんに処方しました。
この薬の副作用としては、大きく分けて次のようなものがあります。(1)脈が遅くなる。(2)気管支が狭まる。喘息がある人は注意が必要。そして便が軟らかくなる。便秘の人は下剤が減るかもしれません。しかし、普段軟便の人は(3)下痢になったり、ひどい場合には、水のようになったりします。さらに、しばしば遭遇するのは(4)食欲不振です。薬の性質から、これらは胃腸の働きを活発にしすぎた結果だろうと思います。
その他、注意すべき事は、筋力の脱力。全く力が入らない、あるいは、過度な筋肉の緊張で動くと痛みが伴います。その場合、尿の色がコーラのような濃い色になる。これは(5) 横紋筋融解症というものです。横紋筋という筋肉が壊れてしまい、その成分が血中に流れ出て生じる症状です。その他にも多くの薬に出現するような(6)薬疹も挙げられます。皮膚に湿疹のようなものが全身に広がります。これらの症状が出たら、薬を中止するしかありません。

当院の基本的な手続きでは、アリセプトの場合、服薬1日目、3日目、7日目に電話を入れます。そして14日目に来院していただき、変わりないようであれば、5mgに増量して1か月ほどで来ていただく。その際に、気持ち悪いとか食欲不振があれば、電話をいただくようにしています。(1)、(4)の副作用が出た場合、薬をやめれば解決します。同時に、認知機能の低下を遅くする効果を手放すことになります。
副作用なく薬を飲みたい、というのが人情でしょう。当院では、副作用をかなり抑え込むことで、継続服用していただけるようになった方が多くおられます。アリセプトの場合、処方の中断率は(様々な理由でご本人が拒薬する場合もあり、それは別ですが)、1割以下である状況です。

その他、注意すべき事は、筋力の脱力。全く力が入らない、あるいは、過度な筋肉の緊張で動くと痛みが伴います。その場合、尿の色がコーラのような濃い色になる。これは(5) 横紋筋融解症というものです。
横紋筋という筋肉が壊れてしまい、その成分が血中に流れ出て生じる症状です。その他にも多くの薬に出現するような(6)薬疹も挙げられます。皮膚に湿疹のようなものが全身に広がります。これらの症状が出たら、薬を中止するしかありません。
当院の基本的な手続きでは、アリセプトの場合、服薬1日目、3日目、7日目に電話を入れます。そして14日目に来院していただき、変わりないようであれば、5mgに増量して1か月ほどで来ていただく。その際に、気持ち悪いとか食欲不振があれば、電話をいただくようにしています。(1)、(4)の副作用が出た場合、薬をやめれば解決します。同時に、認知機能の低下を遅くする効果を手放すことになります。
副作用なく薬を飲みたい、というのが人情でしょう。当院では、副作用をかなり抑え込むことで、継続服用していただけるようになった方が多くおられます。アリセプトの場合、処方の中断率は(様々な理由でご本人が拒薬する場合もあり、それは別ですが)、1割以下である状況です。

副作用をどこまで避けられるか

副作用の克服の仕方について、ひとつだけ、私の臨床経験によるものがあります。それは、「抗認知症薬を少ない量で数か月間と長く飲んでいると、副作用が出づらくなる」というものです。あくまで私の経験知ですが。

今回はアリセプトの場合。レミニール、イクセロンパッチ、リバスタッチパッチのように生物学的半減期が短いと、副作用が出たときには、服薬(貼付)をやめると速やかに薬剤が体から消失するメリットがあります。逆に生物学的半減期が長いと、薬が体に留まる時間が長いため、1日飲まなくても影響は少ないです。
薬を前々日の遅い時間に飲んだり、薬剤の吸収→分布→代謝→排泄の速度が落ちていたりすれば、想定外に血中濃度が上昇するケースがあります。

そこで当院では、食欲不振が出た場合、基本2日は薬を休むように伝えています。副作用が出現した日時によって、処方する量と服薬間隔が変わってくることがあります。薬の副作用の出方を正しく推測し、どこで連絡を取ると効果的な状況判断ができるのかを考察することが大切です。その上でしっかりと経過観察をして対処すれば、副作用を避けることもできると思います。

そもそも、認知症の薬、その効果を調べているのか。副作用が出れば、もう飲めないと諦めていませんか。まだ効果は十分でないにせよ、抗認知症薬はどれも大切な薬で、薬の選択肢もまだまだ少ない。少しでも、みなさんの、薬に対する正しい理解を深めるお手伝いができれば、ありがたいと思います。