もの忘れを自覚させる?!

2025.01.14

今日は「もの忘れを自覚させる?」についてお話します。

もの忘れ外来にて、 「直近の記憶が覚えられないんです。昔のことはよく話すのに」「もの忘れを自覚して、さらに進まないようにしたいので、先生から認知症であることを伝えてほしい」と仰られる方がいらっしゃいます。

まず、ご本人・ご家族様とお話させていただく際、
・もの忘れ認知症ではないこと
・認知症=様々なタイプ(種類) があることをお伝えしています。

一般的に年齢的なもの忘れの場合に関しては、もの忘れを自覚されることが多く、もの忘れの仕方によってそれを手助けする手段を確立することは難しくありません!

一方進行していくタイプのもの忘れの場合、特にアルツハイマー型認知症(以下AD)と診断を受けた場合は、「もの忘れを自覚すること」は難しいと考えられます。もちろん程度や心理・周辺症(BPSD)よっても異なります。

 

では、なぜそれが難しいのでしょうか?

 

ADの特性をお考えいただくと合点がいくのではないかと思いますが、ADは記憶に深くかかわる海馬という部位から萎縮が始まると言われています。つまり、記憶の低下に最も早く症状が現れるのです。もちろん記憶の低下に気づかれる方もいらっしゃいますが、多くの方は、記憶の低下に気づかずに経過していく病態ですので、忘れることを自覚することは難しいのです。

毎日の生活の中「何度も話をしたのにすぐに忘れる」「忘れたことを指摘されると激昂する」、そういったことがあると、介護者はとても大変だと思います。自覚してくれたらどれだけ助かるか

ただ、ご本人も忘れたことを指摘されると、忘れてしまった事実を覚えておくことが難しいため、「怒られた、嫌な思いをした」という感情が残り、介護者との関係性が崩れ、双方大変な思いをされることが多いとお見受けします。

また、忘れてしまった記憶を取り繕うようになったり、ないはずの記憶を作り出してお話する(=作話)のようなことが生まれることがあります。

 

まずはご病気がどんな病気であるのか?介護者にできるまず第一歩は 「ご病気の特性を理解して、本人にとってどのような関わりが有効なのか模索すること」 ではないかと考えます!

ただし抱え込みすぎては大変でする。 本人を支える周りがはじめに倒れてしまわないように適度な距離感、頼れる人やモノはどんどん頼る、自分の時間を大切に無理はしないことが、大切です。

我々は、ご本人だけでなく、ご家族にも寄り添えるセラピストでありたいと考えています。そのような場所の提供するために何ができるか、我々も皆様に還元できるよう日々アップデートしていきます。

 

今日のまとめ

✓もの忘れを自覚することはなかなか難しい

✓アルツハイマーの場合は記憶の定着が難しく、より病気を理解しにくい

✓自覚させることだけでなく、周りがどのようにかかわることが大切か認識する

 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。


廣島先生

医療法人バディ 認知症部門副部長 

廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。