入浴できない?

2025.03.25

今日は入浴についてお話しします。認知症患者様の入浴問題は、臨床場面でもよくご相談いただく問題の一つです。
✓お風呂に入りたくない、入りたがらない
✓デイサービスで誘われても断ってしまう
✓入ってもすぐに出てきてしまう(湯船に浸かるだけで洗えない)
など、なかなか上手く入浴に至らない方もいらっしゃるかと思います。
季節を問わずに、乾燥や汗などで痒みを生じ、皮膚トラブルやそれに伴う感染も懸念されます。
「どんな理由でお風呂に入れないの?」
「どうしたら上手く入浴に誘導できる??」
「入浴にうまく誘導できない場合、どんな対応が有効なの???」
このようなところに焦点を当ててお話しします。

では、そもそもなぜお風呂に入りたくないの?どうしたら誘導できるのでしょうか・・・?
入浴を拒む理由は様々、一つではありません。
考えられる要因としていくつか挙げてみます。

1.面倒くさい(そもそもお風呂が好きじゃない)
→気持ちはわかりますよね。疲れているとご病気でなくとも面倒臭い。
ですので、まずはご本人の思いに耳を傾ける。その上で、定期的な通院や、デイの前日など、入る日を決めておくとうまく行く可能性があります。
銭湯や温泉などで家族と一緒に入浴することも、非日常として楽しんでいただけることがあります。脱衣所での洋服の間違いなどの可能性もあるため、同性の入浴者と一緒が望ましいですね。また、実際に何が大変なのか、蛇口が捻れない、シャンプーがわからない、洗体・洗髪の仕方がわからないなど、普段気づきにくい場面も垣間見えるかもしれません。垣間見えた先に、さらなる対応が見つかることもあります。
 
2.寒いから(暑いから)嫌
→時間が許すのであれば、日中の暖かい時間、天気の良い日に。お部屋の環境を最適(適温)に!

3.外に出てないから汚れていない。汗もかいてないし入る必要性を感じない。
→1と同様に、外出機会を設けて、その都度促してみて下さい
全てに共通することは決して「強要しない」ということ。嫌がる、拒否をするということは必ず理由があります。その理由を無視して進めてしまうと、その他のことが上手くいかなくなってしまったり、関係性が崩れてしまう可能性も。

それでも入りたくない!
という場合。ご家族も困惑ですね。そういった場合、まずは入浴を心地よく感じて頂く!これにつきます。
✓普段は使わない全国各地の湯宿の入浴剤、新しいシャンプー
✓入浴後の保湿剤の利用
✓新しいタオルや部屋着、パジャマ等
これらのプレゼントしてみても良いかもしれません。きっかけづくりとしてはとても自然な流れかと思います。またなかなかお風呂場に近づけない場合は、足湯や清拭(温かいタオルで身体を拭くこと)も入浴につながるステップになる場合があります。
ひとつずつの積み重ねが、心地良い入浴の機会をもたらすかも知れません。

 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。


廣島先生

医療法人バディ 認知症部門副部長 

廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。