認知機能と運転

2025.03.11

今日は「認知機能」と「運転」について少しお話しします。
「今も運転していて、車を手放す気はない。でも家族からは免許返納を勧められている」
「運転は危険と分かっているが、病院や買い物に行く足がなくなる・・・。家族の通院には車が必要だ!」
「大きな事故を起こす前に、もう運転はやめてほしい」
 
認知機能の評価をしていると、免許における様々なお話を伺うことや、実際に警察からの文書をもっていらっしゃる方もお見受けします。
長年運転していた自負や自信、実際手放す事になった後の生活を考えると、車の運転をしている私も、躊躇するお気持ちは理解できます。

では、評価者側はどのような場合免許返納をお勧めするのでしょうか?
1番の理由は何かあった時、咄嗟の判断や適切な対処が難しいことが予想される場合です。事故の後に適切な対処ができるか、これは大きな問題です。
認知症のタイプにもよりますが、生活を通してずっと混乱した状態が続くのではなく、何かのきっかけ(きっかけはなくても)で混乱をきたすことがあるのです。処理しなければならない情報が多ければ多いほど、それは起こりやすい傾向にあります。また、運転は多方面に意識を向けておく必要があるため、注意力が大きく欠如した場合は当然事故なども多くなります。ですので、そういった場合もおすすめはしておりません。
もちろん技術や技能は大前提として大切です。ですが、技術や技能は手続き記憶(=体で覚えた動作や技能)であり、比較的保持されるとされています。ですので、認知機能評価で一番重視しているのは、技術の部分ではありません。 

長年運転していると、当たり前の日常の中にあって、その危険性が希薄になりがちです。日頃から、危険と隣り合わせである事を忘れず、客観的に自身を評価し、周りの意見などに耳を傾けることも必要ですね。
地方では運転免許の返納が生活の質を下げ、認知機能の低下につながることもあります。だからと言って返納しない!と決めてしまうのではなく、免許を返納したのちに使えるサービスなどもございますので、各県や市区町村にお問い合わせいただき、ご家族とじっくり話し合っていただけたらと思います。

 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。


廣島先生

医療法人バディ 認知症部門副部長 

廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。