認知症の人にとって難しいイレギュラーな対応
2025.05.13

近年、豪雨、積雪、台風等、被害が出る様な突然の悪天候に見舞われることがありますが、このような通常と異なるイレギュラーな時の対応こそ、認知症の人にとって難しく注意すべき点があります。
どのような点が難しいのでしょうか?
①『やらない』という判断
高齢者や認知症の人の中では、ほぼ決まったスケジュールで生活されている方が多くいらっしゃいます。これらの習慣は、「手続き記憶」を活用したもので、平常時は強みになりますが、通常と異なる対応が必要な時は注意が必要です。
特に認知症のある人は、記憶障害の影響や、状況に併せた柔軟な判断が難しい場合があり、手続き的に散歩や買い物に出かけ、迷ったり転倒してしまう事があります。
活発で生活習慣が構築されている方ほど、「やらない」お声かけも大切です。
②事前の準備
認知症のある方は、その場での対応は可能でも、何かに備えて逆算して準備をする事が難しいといえます。事前に買い物にいかず、悪天候の中出かけてしまったり、ご家族が購入した食品も、目の前にないと探せない場合があります。悪天候の際には、食品の事前購入、目につく場所での保管、時間に合わせたお声掛けなどに配慮頂くと良いでしょう。
③薬の確保
悪天候は予測せぬタイミングでやってきます。①とも関連しますが、悪天候の中通院して来られる方は多いですが、通常の定期受診なら急を要さない場合もあります。普段から1週間ほど余裕をもってお薬を貰っておくことで、悪天候の中、無理して通院する必要が無くなります。お薬の余裕が無い方は、診察時にお声掛けください。
④行動再開の見極め
例えば降雪している際は外出を控えている方でも、いったん雪がやむと、すぐ外出される方がいます。その際、高齢者の場合、筋力低下だけで無く白内障など目のご病気の影響で凍結した路面と通常の路面を見分けにくかったりで、転倒につながることもあります。雪がやんだあとの外出は2、3日は注意をして、慎重な外出再開の判断をしていただくことが重要です。
慎重になりすぎる事も問題ですが、イレギュラー時の注意点として気に留めて頂けると良いかと思います。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

医療法人バディ 認知症部門部長
前田 順子(言語聴覚士・認知症ケア専門士)
2005年から都内の急性期病院に言語聴覚士として勤務。認知症疾患医療センター内での、入院ケア、認知機能検査、認知症カフェの運営等、認知症のある方やご家族のケアに携わった豊富な経験をもつ。
2020年より医療法人バディにて認知症部門立ち上げ。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。ICTを活用した居宅支援「オンライン認知症ケアプラス®」、スターバックスとのコラボによる認知症カフェ「ウェルビーイング☆カフェ鎌倉」等の企画・運営を担当。

医療法人バディ https://buddymedical.jp/
2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。