睡眠薬と認知症の関連

2025.05.20

今日は「睡眠薬を飲むと認知症になるってホント?」についてお話します。
「眠れないから、睡眠薬を飲んでいます」「眠れないと睡眠薬が欲しいと思うけれど、睡眠薬って認知症になるんでしょ?」といったお声をいただくことがあります。

答えは・・・
適切な使用方法と容量を守る必要はあるが、相関ははっきりしない。むしろ睡眠不足や不眠症が認知症の発症を高めるという報告が多くある・・・です!!
 現在病院で処方されている睡眠薬には大きく分けて3種類あるそうですが、認知症と睡眠薬の関係で調査されているのはその中の1剤、ベンゾジアゼピン系睡眠薬がほとんどです(その他の種類の薬は2010年以降の発売であり、調査が十分ではないため)。
医学の世界では相反する報告が上がってくることはよくあることですが・・・ベンゾジアゼピン系睡眠薬を長期に服用していた人の認知症発症率がそうでない人の1.5倍という報告(@フランス)があったり、同じ方法で行った調査でも発症率を高めないという報告があったりとはっきりしません。

しかし近年の研究では、薬剤の使用よりも不眠や睡眠不足が認知症の発症を高めるといった強力な報告があります。睡眠薬=悪ではありませんが、ケアややり取りの検査の時にもまずは「生活習慣の見直し」の大切さをお伝えしています。不眠を起こしやすい生活習慣の見直しや、日中の活動量を上げる、精神的な安定を図ることに注力していくことが大切です。それでも解決できない場合は適切にお薬を使用し、改善が見られれば減薬を考えていくことが大切ではないかと思います。
日本人はとりわけ働きすぎ、睡眠時間が少ない、と言われています。きっと真面目なのでしょう(笑) ですが、人生100年時代です。
働くことでお金を稼ぎ、生活をする。もちろん大切ですが、100年を共にする自身の身体を大切に、大事にしてくださいね。長くなりましたが、よい休暇をお過ごしください。

<参考>
ベンゾジアゼピン系睡眠薬
★超短時間型→トリアゾラム(商品名:ハルシオン)
★短時間型→ブロチゾラム(レンドルミン) ロルメタゼパム(エバミール) リルマザホン(リスミー)
★中間型→フルニトラゼパム(サイレース) ニトラゼパム(ベンザリン)

その他処方で見かける睡眠薬
★非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:ゾルピデム(マイスリー、ゾルピデム)
★オキシトシン受容体阻害薬:スボレキサント(ベルソムラ)
★メラトニン受容体作動薬:ラメルテオン(ロゼレム)



 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。


廣島先生

医療法人バディ 認知症部門副部長 

廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。