物とられ妄想とその対応
2025.05.27

こんにちは。
今日は認知症の中でもよくご相談のある、物とられ妄想についてお話します。
まず、妄想とは「事実ではないことを強く思い込む事」です。
妄想にはいくつか種類がありますが、認知症で最も多いのが物盗られ妄想で、盗まれていないにも関わらず大事な物(財布・現金・通帳等)を盗まれた、隠されたと思い込む症状です。
物取られ妄想がおこる背景として
・記憶障害により、物を片付けた事、置いた事、使った事に全く心当たりがない
・注意障害により、探せない
このような時、通常は、自らが紛失したと考えますが、判断能力の低下や事実に対する解釈の歪みにより「盗まれた」と考えて誰かを犯人だと思い込んでしまう。
このような流れが考えられます。
人によっては警察に届け出たり、更には「盗まれてはいけない」という警戒心から、複雑な仕舞い込みが起こる事で、それを見つけられず悪循環になります。
物とられ妄想は、認知症の中でも特に初期のアルツハイマー型認知症で多いといわれていますが、元々のご性格や周囲との人間関係によっても変わります。
犯人とされる1位は配偶者(特に夫)と報告がありますが、その他のご家族やヘルパーさん、ご近所さん等が犯人になる事もあります。
傍にいて、ご本人のケアを頑張っている人が犯人にされるのは、とても辛い事です。
次に物とられ妄想の対処法についてです。
認知症ケアの本には「話を聞いて一緒に探しましょう」とありますが、昨今は核家族も多く、お忙しい中で限界もあったり、最悪の場合、探し当てた時に犯人と疑われる事もあります。
このような場合、まずはご本人の不安を取り除く為のグッズの導入をオススメします。
室内での紛失には室内用GPS付キーホルダー、屋外での紛失にはAirTag等携帯アプリで場所を確認できるものが良いでしょう。
また、警戒心が強い方には防犯カメラ(簡易なものでも可)も有効です。
それにより、紛失してもみつけられる→安心→しまい込まない→見つけやすい→周囲の人が疑われない このような好循環を作っていきます。
最近は、便利グッズが比較的安価で手に入りますし、グッズを入れることで言い争い等の感情的なやり取りを回避する事も出来ます。
お困りの方は、一度お試しくださいね。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

医療法人バディ 認知症部門部長
前田 順子(言語聴覚士・認知症ケア専門士)
2005年から都内の急性期病院に言語聴覚士として勤務。認知症疾患医療センター内での、入院ケア、認知機能検査、認知症カフェの運営等、認知症のある方やご家族のケアに携わった豊富な経験をもつ。
2020年より医療法人バディにて認知症部門立ち上げ。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。ICTを活用した居宅支援「オンライン認知症ケアプラス®」、スターバックスとのコラボによる認知症カフェ「ウェルビーイング☆カフェ鎌倉」等の企画・運営を担当。

医療法人バディ https://buddymedical.jp/
2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。