もの忘れと認知症、MCI

2024.12.03

皆様こんにちは。今日はもの忘れと認知症、MCIについての話です。

 

 

1.もの忘れと認知症

もの忘れと認知症は決して=ではありません。

年齢が上がるにつれて、もの忘れは増えます。人の名前が思い出しづらい、といった症状はよく聞かれる訴えです。名前の度忘れや理解が遅くなるなどの変化は、脳の自然な生理的老化に伴うもので、生活に支障をきたすことはほとんどありません。いわゆるこれが「加齢によるもの忘れ」です。

 これに対し、「認知症」は病気によって脳機能が低下している状態をさします。記憶力でいうと、度忘れとは異なり、体験したこと自体を忘れてしまう、人の顔がわからなくなる等があります。その他には、見当識障害(今日が何日か、ここがどこか、自分は何歳か等の現実認識の低下)、判断力低下、遂行機能障害(物事を段取り良く進める能力の低下)等、認知症にはさまざまな症状が伴い、それらを中核症状と呼びます。

加えて、意欲低下や焦燥感、徘徊や妄想、幻覚などといった心理行動症状が見られることがあり、これらは生活に大きな影響を及ぼすことが知られています。

単なるもの忘れでは生じない、これらの症状によりこれまでの生活のご様子に徐々に変化をきたすのが「認知症」であり、放っておくと進行していきます。

 

 

2.MCIとは?認知症と何が違う?

また、認知症と年齢的なもの忘れの間には「軽度認知障害(以下MCI)と呼ばれる状態があります。厚生労働省に記載されているMCIの定義は以下の通りです。

1.年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害

2.本人または家族によるもの忘れの訴えがある

3.全般的な認知機能は正常範囲である

4.日常生活動作は自立している

5.認知症ではない

具体的には・・・同じ話を何度もする、料理の味付けが変わった、ドラマの内容が頭に入らないなど。こう説明すると「認知症と何が違うの?」と思われる方も多いかと思いますが、MCIは症状が限定的で日常生活には支障が及んでいない状態です。

 

 

3.MCIから認知症への移行率(コンバート率)

MCIから認知症へ移行する確率は様々な報告がありますがおよそ10%程度と言われています。先ほども数字で示した通り、MCIは診断された後の生活習慣や社会活動によって、ご病気を防げることもあります。

MCIの診断後も、各々の特性は異なりますので、主治医やケアマネ、ご家族と相談しながらできることを考えていけたらいいですね。

 

 

 


■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。


廣島先生

医療法人バディ 認知症部門副部長 

廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。