徘徊とは
2025.07.01

もの忘れ外来をしていて、ご家族からの質問の上位がこの「徘徊」についてです。「いつ徘徊を始めるかわからないので不安です」「徘徊が始まったら見つかるのかどうか心配です」といったお声を耳にします。
今日は…
1.「徘徊とは?」なにか。どの位の割合で現れるのか?
2.徘徊の理由は?
3.徘徊にはどのように対応したらいいのか?
についてお話しします。
1.「徘徊とは?」
実は徘徊の意味は様々で、臨床的に見ても決まった定義がないのが実情です。
よく臨床では、「歩行目的をもってはいるが、記憶がとどまらないため、途中で目的を見失った結果、彷徨ってしまうことが多い」とお話はするのですが、そうではないことも、広く徘徊とされることが多いようです。
認知症の方の徘徊有症率は17.4%から63%と報告されています。この幅は、先にもお伝えした通り、徘徊の定義が幅広く異なることに加えて、住居の形態や認知症の重症度、観察期間の差異も指摘されています。
2.徘徊の理由
先ほどお伝えした通り、決まった定義がないのが実情ですので、理由は様々です。
・目的をもって外出したが、その目的を忘れて歩き続けてしまった。
・外出が反復的、かつ頻繁に繰り返していて周遊していた。
体感的な回答にはなりますが、初期の認知症の方たちは前者の理由が多い印象です。また、「夕暮れ症候群」が徘徊を誘発するケースもあります。「夕暮れ症候群」とは、夕方になると落ち着きがなくなる症状の事で、特に軽度~中等度の認知症の方では午後7時から10時の時間帯に徘徊することが多いとされています。そして、重度になると時間帯に関係なく徘徊する傾向がみられています。
3.徘徊への対応は
認知症を患う方の年間の行方不明者は、2023年のデータで約19000人。2021年で約18000人ですので、2年で約1000人増えたことになります。年間での認知症者数が増えていることにより、徘徊、行方不明者の数が増えて行くことは想像に難くありません。
少し前のケアの方法としては、徘徊が発覚すると「活動制限、外出制限をかける」ことが当たり前でした。しかし近年の関わりとしては、本人の権利・自立を尊重し、安全に徘徊できるような環境づくりが求められています。また、認知機能の維持を考えても、行動の制限をかけることは逆効果とされていますので、社会資源や便利なグッズ等を駆使して対応できると理想ですね。
徘徊に対する対応としては以下のものがありますので、ご参考になれば幸いです。
★GPS:タグ型、お守り型、靴に埋め込むタイプのもの
https://shinia.info/archives/gps-shoes.html
★QRコード:洋服や持ち物に装着する。発見者がQRコードを読み取ることで、発見場所や状況を知らせることができる。
★認知症高齢者SOSネットワーク 、「どこシル」→いずれも検索してみてください。
1都22県 67市町で導入(2019年現在)
★介護用見守りカメラ(要介護2以上で介護保険の適応あり)
→介護保険適応のみのレンタルもの(ケアマネに要相談)
★その他自費で購入できるものあり
→ https://www.necolico.co.jp/
★ドアセンサー:扉が開いたときにお知らせが届く/機器の前を通り過ぎると音が鳴る
https://itsumono-gps.jp/aboutistumo/itsumodoor/
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

医療法人バディ 認知症部門副部長
廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)
都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

医療法人バディ https://buddymedical.jp/
2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。