ペット飼育と認知症発症率

2025.02.11

今日は以前新聞の記事にもなった
「ペットを飼う高齢者は認知症発症の確率低下」
について、お話しします。
 
記事を要約すると…
◯犬を飼っている人は認知症の発症が40%低下する
◯犬を飼っている人の発症率低下は、散歩などの運動や地域住人との関わりが影響している
◯猫の飼育に関しては飼っている人とそうでない人には有意な差はない
◯ペットの飼育による医療費支払いに違いはないが、介護保険費に関しては半額程度に抑制される
×高齢や加齢の影響でペットの世話ができなくなる「飼育崩壊」
×ペットがいることで施設入所を拒む事がある

犬好きな私としては大変興味深い記事でした。
実は認知機能の低下とペットの飼育については以前より研究されており、このような結果が出ていることは知っておりました。ですが、ニュースになる事で、たくさんの方々に情報が共有されることはとても素晴らしいことですね。

この記事でのポイントは「犬と猫の飼育になぜ大きな差があるのか」というところ。
やはり犬には散歩がつきもの。犬同士の挨拶があれば飼い主同士も話がしやすいものです。
つまりは人との関わり、コミュニケーションがいかに大切か!!ということがお分かりいただけるかと思います。
動物と暮らすことはとても楽しく、学びも多くあります。しかし皆さんが飼育できる状況にあるわけではありません。こういった記事にはキャッチーな事ばかりが大きく取り上げられ、もし飼育が難しくなったら?という問題提起はあまりされていないような気がします。「認知症の抑制には犬がいい!犬を飼ったらいいんじゃないか?」と安易にペットを飼ってしまう方もわずかにお見受けしますが、散歩の問題だけでなく、犬の健康管理やトイレ交換などの仕事も増えます。本当に飼育できる環境にあるのかは、しっかりとが必要かと思います。
また、飼い主がペットを残して旅立ってしまう場合だけでなく、ペットを見送った後に訪れるペットロスに関しては?という問題についても同様です。

我々は環境の変化による認知機能の変動を「リロケーションダメージ」と呼びますが、ペットロスはそれに繋がりますので、現在飼育されている方は、ダメージの軽減にはどのようにしたらいいのかなど、こちらもご家族とお話頂けたら幸いです。
ペット後進国である日本には課題山積みですが、先進国に学び、日本に合った対応が検討されていくことを願っています。

 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。


廣島先生

医療法人バディ 認知症部門副部長 

廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。