夕暮れ症候群とは?
2025.02.04

「夕暮れ症候群」という症状をご存知でしょうか。
夕暮れ症候群とは、認知症のある人が、夕方から夜にかけて情緒的に不安になったり、落ち着かずにそわそわして通常と異なる言動をする事をいいます。
全ての方に見られる訳では無いですが、認知症のタイプの中では、アルツハイマー型認知症の人や、入院など、突然の環境変化があった方に見られやすい症状です。
●夕暮れ症候群の代表的な症状
1. そわそわする
夕方16時頃から夕食の時間帯にかけて落ち着きがなくなります。人によっては「息子の夕飯を作りに帰らなければ!」等、昔の役割を今のご自分にあてはめて、入院中にご自宅に帰宅しようとしたり、ご自宅にいても別の家に帰ろうとする等の行動が見られます。
2.ひとり歩きをする
お一人でうろうろしたり、外に出てしまう事があります。所在ないだけの事もありますが、今いる場所がどこであるかという認識が乏しくなる「失見当識」により、昔住んでいた場所などへ帰ろうと探して歩く事もあります。
3.暴言・暴力
1や2を無理やり制止しようとしたり、対応の仕方によって介護者に対して苛立ちが強まり暴言や暴力などに繋がる事もあります。
その他にも様々な症状があります。夕暮れ症候群がなぜこの時間におこるのか、明らかな原因は分かっていません。記憶障害だけでなく、体内時計の乱れ、疲労、巣案、環境などの複合的な要因が関係していると考えられています。
また、認知症のある人は周囲の環境にも影響を受けやすくなります。夕方に、施設のスタッフがバタバタしている様子や、病院にお見舞いに来られた方が帰る様子をみて、周囲の動きにつられて行動してしまう事もあります。
次に夕暮れ症候群の対処法についてご説明致します。
●夕暮れ症候群の対処法
基本的な考え方としては、ご本人の不安や混乱を和らげ、気持ちを落ち着かせたり、他の事に注意を向ける事を優先しながら環境作りを行っていきます。
具体的には・・・
1. 活動を提供
夕方にご本人が集中出来そうな取り組みや、お手伝いをお願いし、手持ち無沙汰にならない様にします。お一人暮らしの方であれば、午後から夕方にかけてデイサービスを活用し、夕方に外から帰ってくる習慣作りも良いでしょう。
2. コミュニケーション
誰かとコミュニケーションをとることで、その話題を楽しみ、気になっていたことから注意を切り替える事が出来ます。ご家族がお忙しければ、夕方にヘルパーさん等をお願いし、お話して頂くのも良いでしょう。
3. 生活環境を整える
ご自宅で暗い場所があれば、LEDライトなどで部屋を明るくする、また絨毯やカーテンを明るい温かみのある色に変えてみるのも良いでしょう。
4. 自室の位置の再検討
入院中や施設入居中の方は、外の人の動きが気にならないように、窓側や奥の部屋にベッドを移動し、落ち着いた場所で過ごして頂くのも良いでしょう。
5. テレビや音楽の活用
お気に入りのテレビやラジオ、音楽などを楽しんでいただき、他の刺激をいれることで、気分を切り替えられることがあります。
これらの工夫をしても症状が続いたり、強まる場合は、薬物治療も検討になります。かかりつけの医療機関にご相談くださいね。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

医療法人バディ 認知症部門部長
前田 順子(言語聴覚士・認知症ケア専門士)
2005年から都内の急性期病院に言語聴覚士として勤務。認知症疾患医療センター内での、入院ケア、認知機能検査、認知症カフェの運営等、認知症のある方やご家族のケアに携わった豊富な経験をもつ。
2020年より医療法人バディにて認知症部門立ち上げ。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。ICTを活用した居宅支援「オンライン認知症ケアプラス®」、スターバックスとのコラボによる認知症カフェ「ウェルビーイング☆カフェ鎌倉」等の企画・運営を担当。

医療法人バディ https://buddymedical.jp/
2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。