認知症診断後の「空白期間1年3ヶ月」について…

2025.11.04

皆様こんにちは。本日は、認知症診断後の「空白期間 1年3ヶ月」について考えてみようと思います。

 

たびたびニュースになるこの「空白期間」ですが、皆様ご存じですか?

ここでいう空白期間というのは、診断から介護サービス利用までの平均期間を指しています。以前に行った同調査と比較して短縮しているようですが、それでもまだなお空白期間は長いですよね。ではこの空白期間がなぜ長く、長いとどのような弊害が生まれるのでしょうか。

 

変性疾患による認知症は、現代の医療では根治は難しいとされていますが、早期診断・早期治療で進行を遅らせることが可能です。

 

逆を言えば、このタイミングを逃すことで症状が進行する可能性も高いと考えることもできます。だからこそ、診断から適切なサービス導入までの期間が短いほうが、日常生活における自立度は高く維持できる可能性がありますね。

 

ではなぜ1年3ヶ月と、サービス導入までに時間を要するのでしょうか?

 

 1.介護を受けたくないという心理的な抵抗・負担

 2.必要なサービス情報の不足

 3.介護サービス申請から認定が下りるまでの物理的な時間の経過

 

などが挙がります。

 

多くのものわすれ外来では、画像診断と採血、認知機能検査を実施して、診断後内服治療が一般的な流れになるとは思います。

ですが、一番大切なことは「診断を受けること」ではなく「診断の先に、これからどのように生活をしていくのか。今までの生活を継続していくためには何が必要なのか」、それに目を向けて考え、情報を提供・共有、そして実践していくことだと思います。

 

認知症だけでなく、様々な病気に通ずることだとは思いますが、病気に支配されず、うまく付き合っていくことで治療が奏功する、と私自身も経験を通じて痛感しています。当院では開院当初からサービスやケア方法など情報の提供には努めておりますが、医療業界全体として空白期間を短縮するため、診断にとどまらず、診断後の適切な情報提供を進めていく流れができ始めています。

 

また、当事者側の理由として最も負担になりやすい「心理的な抵抗について」ですが、「介護」という言葉の持つイメージがハードルを上げているのも事実です。「介護保険」というネーミングも同様で、介護が必要な人が使うものであり、予防的観点からの利用が少数に留まっています。

 

ですが実際は、「要支援」に関しては予防介護の観点で区分されています。今後を見据え、MCIや初期の認知症の方に介護保険の話をする事もあるのですが…「今は困っていないから。できているから」「困ったら考えます」とおっしゃる方がやはり多いですね。

 

考え方としては、「困ってから動く」のではなく、「困る前に準備しておく」ことがとても重要です。もちろん介護保険下でのサービスが全てではありませんので、継続的な趣味・余暇活動は大切です。そして定期的な認知機能の評価を含め、かかりつけ医をお持ちいただくことも◎。

 

相談できる窓口が一つでもあれば、実際に社会資源を利用したいタイミングなどの相談・助言を頂くことも可能です。まずは、介護保険でどのようなことができるのか、一度お近くの窓口に相談いただいてもよいかもしれません。

 

引き続き当院では空白期間の短縮も目標に、皆様の人生にとってより良い選択肢が提供できるよう努めます。この話題が考えるきっかけ作りとなれば幸いです。

 

 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

廣島先生

医療法人バディ 認知症部門副部長 

廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。