認知症の人とのコミュニケーション

2025.10.28

 

こんにちは。

本日は、認知症のある方との円滑なコミュニケーションについて、言語的に大事なポイントを二つご紹介いたします。

 

1.指示語は使わず、具体的に伝える

指示語とは「これ、それ、あれ」などの特定の物を指す言葉で、こそあど言葉とも呼ばれます。こそあど言葉は、一般的に使用されますが、認知症の人にとっては、理解が難しい場合があります。

 

例えば、

「そこにある薬を飲んで」

「あそこのお店の、いつものお弁当」

 

こういった表現は、薬の置き場所や通常の行動を記憶している場合には簡単に理解できますが、曖昧な場合、「そこ」や「あそこ」がどこを指しているのかイメージすることができず、聞き返してしまいます。

 

「そこにある薬」「テーブルの上にある薬」

「あそこのお店の、いつものお弁当」「駅前のお弁当屋さんの、鮭弁」など

 

具体的な言葉で伝える事が重要です。

 

2.オープンクエッションとクローズドクエッションを使い分ける

オープンクエッションとは、「どう思いますか?」や「なぜですか?」など、回答者が自由に意見を述べることができるように設問の範囲に制限を設けない質問形式です。

一方でクローズドクエッションとは、「はい」か「いいえ」で答えられる質問や、選択肢から選ぶ質問など、あらかじめ回答の範囲が限定されている質問形式です。

 

認知症の人にとって、記憶や思考に負荷がかかるオープンクエッションは、答えるのが困難な場合があります。しかしながら、会話を発展させたり、ご本人の主体性や意思を自由に述べて頂く時には、重要な手法であるとも言えます。

 

認知症の重症度にもよりますが、認知症ケアの場面では、この2つの質問形式を適切に組み合わせて、効果的なコミュニケーションを図ります。

 

例)何が食べたいですか?「肉か、魚か、どちらがいいですか?」「肉」

例)京都旅行はどこに行きましたか?「清水寺には行きましたか?」「はい」「紅葉は見られましたか?」など

 

この様な流れで、自由な意見を伺いつつも、最終的に情報が確実に伝わる形で会話を進めていきます。

 

このようなコミュニケーションにおける工夫は、小さなことのように思えますが、認知症のある人との、コミュニケーションの質的な向上に繋がるだけでなく、その方の自尊心を尊重し対話者との関係性を保つ上でも大切です。ご参考になれば幸いです。

 

 

 

 

 ■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

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医療法人バディ 認知症部門部長
前田 順子(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

2005年から都内の急性期病院に言語聴覚士として勤務。認知症疾患医療センター内での、入院ケア、認知機能検査、認知症カフェの運営等、認知症のある方やご家族のケアに携わった豊富な経験をもつ。

2020年より医療法人バディにて認知症部門立ち上げ。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。ICTを活用した居宅支援「オンライン認知症ケアプラス®」、スターバックスとのコラボによる認知症カフェ「ウェルビーイングカフェ鎌倉」等の企画・運営を担当。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。