行方不明対策
2025.09.30

こんにちは。
今日は「行方不明」に関する対策についてまとめます。
行方不明とは、本人の居場所が分からなくなり、捜索が必要な状態を指します。
令和6年のデータによると、認知症に関連する行方不明者数は年間で18,121人。前年に比べて918人減少していますが、依然として高い水準で推移しています。男女別の割合では、男性が55.7%(10,597人)、女性が44.3%(8,442人)と男性の方が多いと報告されています。
行方不明者の捜索は、従来「見守りネットワーク」などの事後の捜索が中心でしたが、近年の技術進歩により、個人レベルでの予防策やプライバシーを保護した上での捜索が可能となっています。
ここからは、行方不明対策および発見に役立つツールについて、そのメリットとデメリットをまとめてご紹介します。
1.センサー
- マット型センサー: ベッドや玄関に設置し家族が動きを検知
- 人感センサー: 玄関や部屋の入口に設置し外出を検知
センサーは家族と住む人には便利ですが、独居者には不向きです。また、一度屋外に出ると利用できないという欠点もあります。
2.GPSグッズ
- キーホルダー型GPS: 財布、杖、お守りなどに入れスマホで居場所を検知
- 靴埋め込み型GPS: 靴裏にGPSを入れ居場所を検知(介護保険適応製品あり)
- スマートウォッチ型GPS: 腕時計で位置情報を検知。体調変化時の通知機能もあり。
GPSグッズは、遠距離でも具体的位置を特定できることや、行動パターンを把握できるという利点があります。しかし、手ぶらで外出する場合や靴を履き替える習慣がある人には不向きであり、位置確認を行う際にご家族のスマートフォン操作も必要です。
3.位置情報のわかるアプリ
- スマートフォンGPS機能:アプリをインストールし、家族のスマホで位置情報を確認します。
メリットは、遠距離で位置情報を確認できること、行動パターンが把握できること、複数人で共有できることです。デメリットは、スマホの置き場所に依存することや、充電切れで使えなくなることです。
4.QRコードシール
- 衣服や持ち物に貼るQRコードシール
その方の服などにつけているQRコードを発見者が読み取り、その情報が家族や支援機関に伝達される仕組みです。手ぶらで外出する人も使用可能であり、個人情報が保護された状態で長期間の捜索が行える点が利点です。一方、居場所の検知は不可能であり、予防策としては不向きといえます。
5.見守りネットワーク
- 認知症の方の氏名・住所・特徴・写真などを事前に警察や自治体に登録するシステム。行方不明時に捜索依頼。
公共の交通機関の協力を得ながら、長期的な捜索が可能な事がメリットですが、予防策としては不向きといえます。
尊厳およびプライバシーの観点から、GPSに抵抗を感じる方もいらっしゃるかと思いますが、このようなデバイスの普及に伴い、認知症の人を物理的に拘束することなく安全を確保することが可能になってきています。
その方にあった方法で安心に過ごして頂けるよう、ご活用いただければと思います。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

医療法人バディ 認知症部門部長
前田 順子(言語聴覚士・認知症ケア専門士)
2005年から都内の急性期病院に言語聴覚士として勤務。認知症疾患医療センター内での、入院ケア、認知機能検査、認知症カフェの運営等、認知症のある方やご家族のケアに携わった豊富な経験をもつ。
2020年より医療法人バディにて認知症部門立ち上げ。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。ICTを活用した居宅支援「オンライン認知症ケアプラス®」、スターバックスとのコラボによる認知症カフェ「ウェルビーイング☆カフェ鎌倉」等の企画・運営を担当。

医療法人バディ https://buddymedical.jp/
2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。