認知症ケアとペットの関係を考える:メリットと課題の両面から

2026.06.23

子どもの数よりペットの数が多いといわれる昨今、犬や猫、その他の動物と暮らしている方も多いのではないでしょうか。

ニュースやネットの記事では認知症と動物飼育に関連する話題も多く、論文も多数出ています。数年前、「犬の飼育と認知症」についての論文をご紹介したことがありますが、今回はもう少し広い視野で認知症との関連を見て行きたいと思います。

人間以外の命と向き合うことになりますので、「癒し」や「認知症ケアに効果がある」ということだけでなく、多角的に検討していく必要があります。本日もどうぞお付き合いください。

 

 

認知症ケアとペットの関係について

情動の安定

認知症ケアとペットの関係について、多くの研究が進められています。現段階で科学的に証明されている事は「情動の安定に寄与する」ということです。

情動の安定とは…言い換えるならば「安心感」でしょうか。ペットとのふれあいで得られる安心感により、不安が軽減されます。この不安が軽減されることで落ち着きがみられるようになるため、夕暮れ症候群⋆を含めた不安が強い方には効果が高いことが分かります。

 ⋆夕方になると落ち着かなくなる症状

 

 

生活リズムの安定

特に犬の場合は顕著ですが、散歩、食事時間、トイレの世話等、比較的規則正しい生活が軸となります。認知機能の維持のため、「生活リズムの安定」についての重要性はお伝えしたことがあるかと思います。自分以外の誰かのための生活リズムを整える、ペースメーカーになってくれることがあります。

 

 

会話の増加

ペットに話しかける、ペット仲間(散歩仲間)との会話、家族との会話。ペットを通じて会話が増えます。「かわいいね」「ご飯食べる?」などの短い声掛けも、脳への刺激(特に前頭葉や側頭葉)になります。

 

 

役割の増加

ペットのお世話をする役割が生まれます。自分以外の誰かや何かのためには案外がんばれたりしますよね。認知症を持つ方、特に初期の方にはとても有効だと思われます。

 

ここまでペットとの生活の有効点をお伝えしました。これを読んで「そうか!ペットを飼ってみよう!」と思われた方もいるかもしれませんし、実際にペットと暮らしている方は共感する場面も多くあったのではないでしょうか?

ですが、相手が「生き物」という点で、課題も山積するのが事実です。

 

 

実際の生活で起きるリアルな課題

お世話の抜け落ち

ペットのお世話が認知機能の維持に良い影響を与える側面がある一方で、病態の進行とともにその『お世話』自体が抜け落ちてしまうリスクも考えなければなりません。

 

例)

▶ 御飯の準備・服薬管理:与えることを忘れる / 与えたことを忘れて何度も与えてしまう / ペットの内服管理が難しくなる

 

▶ 散歩:散歩に行くことを忘れる / 散歩に行ったことを忘れて何度も行く / 道に迷う / リードの適切な管理が難しくなる

 

▶ トイレ処理:汚れに気づかない / ペットシーツを替え忘れる / ペットシーツが替えられない

 

▶ 予約の失念:トリミングや動物病院の予定を失念する

 

 

家族負担の増大

上記の懸念事項をフォローするために…家族への負担も大きくなります。

同居している場合だけでなく、別居の場合も同様です。ペットは生き物です、私たちと同じで命があります。もしお世話が難しくなった時にどうするべきなのか、本人や家族と相談しておく必要があります。

先ほどからペットと表記してはいますが、犬や猫その他の動物も一緒に暮らしている時点で大切な「家族」であるとの認識も昨今では広まっています。認知症を持つ方だけでなく、一緒に暮らしているペットの安心できる環境も整えねばなりません。

 

ペットロス

犬や猫、その他の家庭で飼育するペットの多くは人間の寿命より短く、私たち人間が多くの場合看取る事になります。ですが、認知機能の状態によっては「死」を理解することが難しい場面も。ずっと探し続けたり、不安になって行動が乱れるケースもあります。

 

このように、ペットと暮らすことはプラスの面だけではなく、それに付随する問題に家族がどのように関わる事ができるかも重要なポイントです。ペットにも住み慣れた環境で命を全うしてほしいけれど、それがかなわないことも多くあります。

一方、リスクがあるからと諦めるのではなく、周囲のサポートを活用しながら「本人とペットが共に穏やかに過ごせる時間」をどう守っていくか、という視点を持つことも大切です。そんな時には、ペット後見互助会や終身預かりのサービス等もあります。

 

今現在動物と一緒に暮らされている方、これから動物を迎えようとする方も、一緒に暮らす未来の先に少し目を向けてお考えいただく機会になればと思います。

 



 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

廣島先生

医療法人バディ 認知症部門副部長 

廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。