内服管理の限界と次の一手

2026.08.04


「毎日の薬、ちゃんと飲めているかな?」

認知症のある人や高齢のご家族をお持ちの方なら、一度は抱いたことがある不安ではないでしょうか。高齢になればなるほど、血圧、血糖、睡眠の薬など、多剤服用は避けられません。しかし、どれだけ工夫しても、どうしても飲み忘れや、逆に「飲んだことを忘れての重複服用」が起きてしまうのも事実です。

 

多少の飲み忘れは「寛大な気持ちで接することも大切」と前置きしつつも、やはり無視できないのが、薬の飲み忘れが体に及ぼすリスクです。症状の悪化や予期せぬ体調不良、さらには「残薬が溜まって処方日数と合わなくなる」という管理上の問題まで、毎日の積み重ねが、やがて大きな山となってご家族の肩にのしかかります。


そんな時、私たちがまずお勧めするのが「お薬カレンダー」です。曜日や時間ごとに薬をセットし、視覚的に分かりやすくする工夫です。しかし、認知機能の低下が進むと、このカレンダーさえもただの「壁の飾り」になってしまうことがあります。ではお薬カレンダーが使えなくなった時、私たちは「次の一手」をどう打つべきなのでしょうか。

 

■ 段階に応じた「守り」「援助」への移行

服薬管理において重要なのは、現在の「本人の状態」と「介助量」を照らし合わせ、状況を適切に把握し、段階に応じて対応することです。

 

1. 「声掛け」でカバーできるステージ

カレンダーに頼るだけではなく、家族の「声掛け」という人的サポートを組み合わせる段階です。最近ではICTツールが進化しており、毎日定時にデジタル機器からお声掛けをし、服薬後にボタンを押すことで、離れて暮らす家族のスマホに通知が届く仕組みも一般的になりました。これらは単なる監視ではなく、「気にしているよ」という家族からの温かいメッセージでもあります。

 

2.  物理的な介入が必要なステージ

声掛けでも失念してしまう場合は、システムを利用しての見守りの段階。ここで検討したいのが、自動服薬管理ロボットや、服薬管理ボックスなどのICT見守りツールです。決まった時間にのみ錠剤が機械から出てくる仕組みは、飲みすぎを防止するだけでなく、服用の有無を家族に知らせてくれるものもあり、双方の心理的な負担を軽減してくれます。

 

3.  プロの力を借りるステージ

自宅内の工夫だけでは限界を感じたら、プロの力を借りることも大切です。訪問介護(ヘルパー)や訪問看護による服薬介助、デイサービスでの服薬支援も可能です。

 

■ 家族だけで抱え込まず、プロと一緒に「仕組み」を整える

お薬に関しては、自分の力で何とかする!というよりも「薬を飲む」行為そのものが大切です。日常生活の中で内服の確実性を担保するためにすべきことをまず考える。これが大切になってきます。そして、今お伝えしたこれら全てを単独で行う必要はありません。多くの場合、複数の手段を組み合わせ、試行錯誤しながら最適解を見つけていくことになります。


まずは、「何が原因で飲めていないのか?」を、かかりつけ医、薬剤師、そしてケアマネジャーなどと一緒に分析してみてください。例えば、「1日3回の服薬を1日1回に減らせないか」等、服薬回数を調整することで、本人の負担だけでなく介助の負担も大幅に軽減できるケースは多々あります。

 

服薬管理は、長く続くマラソンのようなものです。ご家族だけで抱え込んで息切れしてしまう前に、周りと状況を共有しておくことが大切です。


「仕組み」が合わなくなったのなら、無理に使い続けるのではなく、新しい仕組みへとアップデートする。その余裕を持つことこそが、ご家族の健康と、ご本人との穏やかな時間を守り抜くための、最も大切な一手になるはずです。

 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

廣島先生

医療法人バディ 認知症部門副部長 

廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。