「待つ」という力

2026.03.24

 

今回は、認知症ケアにおいて大切な「待つという力」についてお話ししたいと思います。

これまでも何度かお伝えしてきたテーマですが、「待つことの大切さ」と同時に、その難しさを感じている方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は視点を少し変えて、「待つ」ことが本人や家族にとって、どのような意味やメリットを持つのか一緒に考えてみたいと思います。

 

 


■ 「待つ」≠なにもしない

「待つ」と聞くと、ただ黙って見ている、何もせず放置するようなイメージを持たれるかもしれません。しかし、認知症ケアにおける「待つ」は、それとは少し異なります。

時間がかかっても、本人ができることを続けてもらうためにあえて手を出さず見守ること。先回りして答えや行動を奪わないこと。これは立派な支援であり、何もしないことではありません。

本人のペースを乱さず、その人らしさを尊重すること自体がケアそのもの。「待つ」ことは目に見えにくい大事な関わりです。

 

 


待てないのは家族?

実はこの「待つ」という行為で、より忍耐が必要なのは、本人よりも家族や援助者であることが少なくありません。

「早く進めたい」「失敗させたくない」-そんな思いから、「ここまではこちらでやってしまおう」と手を出してしまうこともあるでしょう。これらはすべて、本人を思う気持ちの表れです。

ですがその結果、かえって本人が混乱したり、「自分ではできない」と感じてしまうことにつながる場合もあります…。

着替えに時間がかかる、外出準備がなかなか進まないなど、日常生活の中には「待つ」場面がたくさんあります。時間の余裕は、心の余裕につながります。可能なときには、少し余白を持って待つことを意識してみてください。

もちろん、待てなかった自分を責める必要はありません。気づけたことを、次に生かせればそれで十分です!

 

 


■ 待ってみたら、意外とできることが…

「もうできないだろう」と思っていたことを、時間はかかっても、本人なりのやり方でやり遂げていた…そんな場面に出会ったことはありませんか?

最短距離で目標にたどり着くことだけが正解ではありません。試行錯誤しながらプロセスを自分で見つけ、達成することは、本人の自信や達成感につながります。そしてそれは、家族の安心感にもつながります。

「待つ」ということは、ただ時間を与えることではなく、「あなたならできる」と信じる姿勢そのものなのかもしれません♡


認知症の有無にかかわらず、人と関わる中で相手を信じて待つことは、簡単なようで実はとても難しいものです。だからこそ、少しゆとりを持ちながら向き合うこと、「待つ」ことを大切にしてみてくださいね。

 

 

~まとめ~

✅「待つ」ことは、何もしないことではない

✅待つことが難しいのは、家族や援助者の側

✅「待つ」ことは、その人の尊厳を守る支援

✅支援とは、正解を与えることではなく、力を引き出すこと

 


本日もお読みいただきありがとうございました。

 

 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

廣島先生

医療法人バディ 認知症部門副部長 

廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。