誤解されやすい認知症の話

2025.04.01

みなさんこんにちは。
今日は、認知症に関する情報の中で、意外と誤解されやすい事柄について、概要と共にお伝えしたいと思います。

1.認知症とは「症状」である 
認知症とは様々な理由で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなり、日常生活に支障を来すまでに低下をした「状態」の事です。
誤解されがちですが、認知症自体は病名ではなく、症状の総称をいい、その原因となる疾患が病名となります。


2.認知症の原因疾患は70種類以上ある 
認知症の原因疾患、いわゆる病名は70種類以上あるといわれています。
その中で最も多いのはアルツハイマー型認知症で全体の65%程度を占めます。
続いて血管性認知症、レビー小体型認知症と続きます。2つの疾患が合併する場合は、混合型認知症といわれ、複数の疾患(例えば、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症)が病名となります。混合型だからといって重度とは限らず、軽度や中等度レベルの認知症の方でも2つの疾患が合併する事もあります。それぞれの認知症で症状や治療方針が異なりますので、認知症の原因疾患を知る事は非常に大切です。


3.認知症の最たるリスクは加齢である
年齢別の認知症割合
年齢階級  男性       女性
 65~69  2.8%     3.8% 
 70~74  4.9%     3.9%
 75~79 11.7%  14.4% 
 80~84 16.8%  24.2% 
 85~89 35.0%  43.9% 
 90~94 49.0%  65.1% 
 95以上    50.6%  83.7%

 厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業より引用

 

90代では、認知症の人はほぼ過半数に及んでいます。認知症は特別なご病気と思われがちですが、認知症の最も大きなリスクは年齢ですので、ご長寿日本では年齢を重ねるにつれ誰もが経験する可能性があると言えます。


4.全員が徘徊するわけではない
認知症の症状は、中核障害と行動・心理症状(BPSD)に分かれます。例えばアルツハイマー型認知症の場合、中核症状の中では、記憶障害や見当識障害等が目立ちますが、症状が進行していくと失語や失認等、他の症状が合併することがあります。
行動心理症状については、すべての認知症の人に見られるわけではありません。
「認知症が進んだらいつか必ず徘徊するのかしら?」と、不安に思われている方も多いですが、行動・心理症状は、その方のご性格、生活背景、心理状態、周囲の人との人間関係等を反映して見られるともいわれています。

★中核症状:記憶障害、見当識障害、遂行機能障害、判断力の低下、失語、失行等 
★行動・心理症状:不安、妄想、徘徊、暴言、暴力等 


5.お薬が適応にならない疾患もある
現段階で使われている認知症のお薬は「抗認知症薬」と呼ばれ、中核症状の進行を遅らせたり緩和するものですが、抗認知症薬が適応にならない疾患もあります。例えば血管性認知症は抗認知症薬の対象にはなりませんので、原因疾患を知る事が大切です。

中核症状に対して、抗認知症薬が適応になる疾患とその際使われるお薬は以下の通りです。
●アルツハイマー型認知症:ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、レカネマブ(2023年12月に保険適用) 
●レビー小体型認知症:ドネペジル 

また、先に述べた行動・心理症状の治療は、非薬物療法といって、周囲の人の対応や日々の過ごし方等の環境調整等が優先されます。それでも改善しなかった際には、薬物治療を検討する事があります。

 

6.認知症予防には長年の生活習慣が大切!
2024年、ランセットという学術誌の報告によると、認知症の原因の中で未然に防げるリスクが全体の45%を占めており、人生の各ステージ毎に以下14項目にまとめられました。 

●18歳まで
①教育機会の不足 
●18~65歳
②難聴③高LDLコレステロール④うつ病⑤頭部外傷⑥運動不足⑦糖尿病⑧喫煙⑨高血圧⑩肥満⑪過度の飲酒 
●65歳以上
⑫社会的孤立⑬大気汚染⑭視力障害 


近年、新薬の開発などで、認知症の早期診断・早期治療が重要視されるようになっていますが、その方にとって適応を丁寧に見極める事がとても重要です。
受診される時の参考になれば幸いです。

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

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医療法人バディ 認知症部門部長
前田 順子(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

2005年から都内の急性期病院に言語聴覚士として勤務。認知症疾患医療センター内での、入院ケア、認知機能検査、認知症カフェの運営等、認知症のある方やご家族のケアに携わった豊富な経験をもつ。

2020年より医療法人バディにて認知症部門立ち上げ。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。ICTを活用した居宅支援「オンライン認知症ケアプラス®」、スターバックスとのコラボによる認知症カフェ「ウェルビーイングカフェ鎌倉」等の企画・運営を担当。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。