AI時代の認知支援

2026.06.30

皆様、こんにちは。今日はAIと認知支援についてお話していこうと思います。

近年AIが普及し、介護や医療の世界でもAIによる支援が多くみられるようになってきました。とはいえ、まだ草創期。しかし、現介護者が被介護者側になる頃には、すでにAI成熟期を迎えていると考えられます。

では、これらの技術は認知症の予防や認知機能の維持につながるのでしょうか。ここでは、メリットと留意点の両面から考えてみたいと思います。

 

 

AIツールを使うことで得られるメリット

● 記憶の外部補助

認知症でまず気になるのは「記憶力の低下」です。「薬飲んだっけ?」「明日の予定は?」「何時に出かけるんだっけ?」といった日常の不安に対し、AIは感情を交えず淡々とサポートしてくれます。

薬やデイサービスの予定を自動でアナウンスしたり、質問すれば比較的正確に返答が得られたり、外出先から家電のON/OFFができるなど、生活の“抜け”を補ってくれます。

 

● 会話による支援

一人暮らしや、家族と生活時間が合わない場合、AIは“話し相手”として役立ちます。24時間365日、眠れない夜の不安にも寄り添い、発話機会を確保してくれる存在です。

会話は認知機能の維持にとても重要で、AIとの対話はその一助になります。

 

● 介護者の負担軽減

繰り返しの質問は介護者の大きなストレスになります。AIであれば、何度同じ質問をされても淡々と答え続けることができます。これにより介護者の精神的負担が軽減され、結果として質の良いケアにつながります。

 

● 専門的な支援ツールの利用

近年は専門特化型のAIも進化しています。当法人でも、セラピストがオーダーメイドで声かけ内容を設定し、薬や予定をアナウンスする「オンライン認知症ケアプラス®」を提供しています。こうしたツールは、本人だけでなく介護者の疲労感軽減にもつながります。

 

 

留意点とAIの限界

AIロボットには50万円以上するものもあり、サブスクでも月額1万円を超える場合があります。導入コストに加え、初期設定やWi-Fi環境の整備など、家族のサポートが必要になる場面も多く、「買えばすぐ使える」というものではありません。

また、AIは万能ではありません。質問の仕方が少し変わると答えが返ってこないことがあり、認知症の方の“言葉の揺らぎ”に対応しきれない場面もあります。さらに、AIは感情を理解しているように見えても、実際には“推測しているだけ”。深い共感や寄り添いは、あくまで擬似的なものです。

そしてもう一つ重要なのは、AIが会話相手になることで、人との関わりがさらに減ってしまう可能性です。AIとの会話は発話機会を増やしますが、人との会話とは別物です。表情、間、空気、温度、視線。こうした非言語情報はAIでは代替できません。

 

 

AIはあくまで“補助輪” 人との関わりはなくせない

AIは敵ではありませんが、救世主でもありません。考え方として大切なのは、AIを“人との関わりを補う道具”として使うことです。

夜間の不安への対応、薬や予定のリマインド、繰り返しの質問への対応、家族不在時の見守りなど、“人がやると負担が大きい部分”をAIに任せ、家族は「人にしかできない関わり」に集中する。これが理想的な使い方です。

AIが成熟期を迎える頃、私たちはもっと上手にAIと共存しているのではないかと思います。そのときに大切なのは、AIに任せる勇気と、人として関わり続けるというこの2点だと感じています。

 



 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

廣島先生

医療法人バディ 認知症部門副部長 

廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。