認知症と災害について
2025.11.11
南海トラフ大地震や首都直下型地震のリスク、被害想定などがニュースのトップを飾る事がある地震大国日本。近年は地震だけではなく、温暖化による酷暑や大雨などの自然災害も多くみられていますね。そこで今日は「認知症と災害」について考えて行きたいと思います。いつか来る災害にうろたえない様に…一緒に考えて行ければ幸いです。
平時から、認知症の方は「環境変化にとても敏感である」とお話しさせていただいています。安心できる環境下であれば混乱なく過ごせる方も多い中、入院や引っ越しなどで多くダメージを受けることは皆様ご存じのとおりです。つまりそれだけ環境変化が認知機能を変動させる可能性があるわけで、地震や災害も同様です。事前の準備、周囲の理解や協力が不可欠です。
では実際にどんなことを準備して、万が一の場合はどう対処すればいいのか、項目ごとに分けてチェックしていきましょう。
1.事前準備
①避難計画の確認
安全に避難できるルートを確認
家族や支援者と共有
②情報の共有
病状、薬、行動面での特徴、家族の状況など記載した「本人カード」を作成・利用
③持ち出し品の準備
常備薬、診察券、保険証、マイナンバーカード等を、普段から置き場所を明確にし、家族で共有。常備薬は最低3日分。7日分あると比較的安心です。また、本人が安心できるもの(お気に入りの品や写真など)を準備しておくことも忘れずに。
2.避難時・避難所の対応
①できるだけ静かな避難場所を選定
普段と違う環境で、騒がしかったりするだけで混乱してしまいます。その結果、行動・心理症状が強くなることも。
移動時の声掛けも落ち着いた口調で。大変な状況下ですが、事前準備がしっかりあるだけで心の余裕が生まれます。
②できる限り家族や見知った支援者が一緒に行動
発災時は極力離れない。近くで見守ることのできる環境が大切です。
③状況を、繰り返し、丁寧に、穏やかに説明
記憶があいまいで災害が起きたことを忘れてしまうことも…繰り返しの質問にご家族も疲弊してしまうことがあるかもしれませんが、可能な範囲で穏やかに会話をしましょう。
④避難所においては、ご本人の状況を可能な範囲で周囲と共有
災害時には周りもみな余裕がなく完全にフォローすることが難しいかもしれません。ですが、周りにも認識をしていただくことで、本人も介護者も孤立するリスクを軽減できます。
3.地域・行政の支援体制
①認知症高齢者など見守り支援体制への登録
地域によって名称は異なるかもしれませんが、「要配慮者」として登録しておくことで、避難時に支援を受けやすくなります。家族以外の支援体制も整えておくと安心です。
②災害時要配慮者支援マニュアルの活用
各地域、市役所や区役所などで災害時要配慮者支援マニュアルを配布しているところがあります。HPなどで入手することも可能ですので、事前に目を通し、必要な情報を集め、利用しましょう。
いつ訪れるかわからない災害に備え、安全に避難し生活を送るために…事前の準備はとても大切です。つい後回しにしてしまいがちですが、この投稿が皆様の災害準備へのきっかけとなれば幸いです。
■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。
医療法人バディ 認知症部門副部長
廣島真柄(言語聴覚士・認知症ケア専門士)
都内の総合病院に言語聴覚士として15年以上勤務。主に急性期病院で脳卒中、神経難病の患者のリハビリを担当しながら、認知症疾患医療センターでもの忘れ外来の検査や入院患者の認知症ケアを担当。2021年に医療法人バディに入職。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。
医療法人バディ https://buddymedical.jp/
2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。
