認知症のある人のテレビの楽しみ方

2026.03.10

「認知症になって以前のようにはドラマを見なくなりました。」

「観ているというか、ただついている感じになりました。」


ご家族からこのようなご報告をよく受けます。



テレビの見方と認知症の症状とは深く関連しており、特にアルツハイマー型認知症の主症状である記憶障害が影響します。

今日は、認知症のある人のテレビ視聴の傾向と、今ある機能を活用しながら、楽しくテレビを見る方法についてお話しします。元々テレビをあまりご覧にならない方には実感しにくいテーマかもしれませんが、身近な話題として読んでいただければ幸いです。

認知症とテレビ視聴の変化

認知症の原因疾患の中でも、特にアルツハイマー型認知症では、直近の出来事を覚えるのが苦手になる「エピソード記憶」の低下が顕著です。これにより、2時間ドラマや週1回の連続ドラマなど、直近の内容を覚えておくことが求められる番組は、だんだん楽しみにくくなっていきます。前回どこまで見たか、登場人物同士の関係はどうだったか、といった情報が思い出せず、「なんとなくついているだけ」の状態になりやすいのです。

また、遂行機能障害の影響で、番組表を見ながら「どの番組を、何時から見よう」と観る物を計画的に選ぶことが難しくなってきます。その結果、たまたまついているチャンネルをそのまま継続して観る時間が増え、受け身のテレビ視聴になりやすくなります。

一方で、クイズ番組、歌番組、スポーツ番組などは、比較的長く楽しんでご覧になる方が多いと言えます。これは、認知症になっても保たれやすい意味記憶(一般的な知識)や遠隔記憶(若い頃の記憶)を活用できるためです。

 

 

 

楽しみやすい番組の選び方

いくつか例をご紹介します。


・クイズ番組

元々知的好奇心の高かった方などには、歴史ものや雑学系など、知識で答えられるクイズ番組が向いています。テンポが良くその場での集中力も高められるといえます。



・歌番組

懐かしい歌が流れる番組は、いわゆる「回想法」のきっかけになります。その曲が流行した頃の出来事や、若い頃の思い出がよみがえり、感情的な喜びを感じやすい時間になります。一緒に口ずさんだり、当時のエピソードを話してもらったりすることで、その人らしさを引き出す場にもなります。



・スポーツ中継

野球や相撲等、ルールが馴染み深く分かり易いものがおすすめ。特に実況が入る中継は、テンポ感があり、次に起こる場面を想像しやすいため、集中力が比較的持続しやすいと言えます。



・ドラマ

難しい中でも楽しめる番組として、大河ドラマや昔見た映画の様な、歴史もの・決まったパターンで進む作品であれば、意味記憶(歴史の知識や時代背景)を活用しながら楽しむことができます。また、ご長寿番組の枠は「この時間はあのドラマ」という認識が保たれ、見当識の目印にもなります。




これらの番組を選ぶ際には、電子番組表での簡単検索を家族がサポートし、あらかじめ録画予約や視聴予約をしておくと良いでしょう。ご本人の好みに合わせて少し工夫を加えることで、より楽しめるように活用してみてくださいね。

 

 


■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

 

前田先生

医療法人バディ 認知症部門部長 

前田 順子(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

2005年から都内の急性期病院に言語聴覚士として勤務。認知症疾患医療センター内での、入院ケア、認知機能検査、認知症カフェの運営等、認知症のある方やご家族のケアに携わった豊富な経験をもつ。

2020年より医療法人バディにて認知症部門立ち上げ。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。ICTを活用した居宅支援「オンライン認知症ケアプラス®」、スターバックスとのコラボによる認知症カフェ「ウェルビーイングカフェ鎌倉」等の企画・運営を担当。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。