PCA(後部皮質萎縮症)について

2026.03.06

今日は非典型的なアルツハイマー病の一種である「PCA(後部皮質萎縮症)」についてご説明します。​

 

PCAとは、“Posterior Cortical Atrophy”の略で、日本語では「後部皮質萎縮症」と呼ばれています。脳の後頭葉から頭頂葉にかけての領域が萎縮することで起こる認知症の一種で、多くの場合、その原因はアルツハイマー病と同じ病理ですが、症状が異なる事が特徴です。​

 

 

PCAの主な症状

  • 視覚認知障害:物の位置、奥行きの感覚がつかみにくい、物が見えていてもそれが何かわからない
  • 空間認知の困難:道に迷いやすい
  • 計算や読み書きの障害:数字や文字の認識が難しくなる

 

発症年齢と特徴

平均発症年齢は59歳前後と、一般的なアルツハイマー病よりも若い世代に多く、女性にやや多い傾向があるといわれています。記憶障害は初期には目立たず、視覚や空間認知の問題が中心となります。進行すると、典型的なアルツハイマー病と同様に記憶障害や日常生活の困難が加わります。​

これらの症状は最初、「見えにくい」と訴えられることが多く、初期には記憶障害が目立たない事も多いため、認知症ではなく「目の病気」と誤解されることも少なくありません。​

 

 

 

診断と治療

脳のMRIやPET検査で後頭葉・頭頂葉の萎縮や低代謝を確認されること、また認知機能検査の結果を元に診断されます。治療はアルツハイマー病と同様に、ドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬により進行を遅らせるための薬物治療やリハビリ、環境調整が中心となります。​

 

 


日常生活での工夫

  • 環境調整:部屋を明るくし、コントラストを強く(黒白明確に)する。自宅の中では、家具等は安全に固定したり、階段のステップにコントラストをつけたシールを貼る、食事はランチョンマットと皿の色にコントラストをつけ、皿の位置を確認しやすくする等、見やすくするための工夫が有効です。
  • 補助具活用:拡大読書器、音声時計でのアナウンス・音声デバイスでのリマインドコール、音声アプリでの道案内など、視覚の代わりに聴覚を活用する環境を整えます。

 

PCAの症状を理解する事は難しいですが、まずは、「物の見え方が変化している」ことを理解し、専門職と相談しながら、ご本人ができるだけ安全に、出来る事を維持できるような環境を整える事が大切です。

 

 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

前田先生

医療法人バディ 認知症部門部長 

前田 順子(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

2005年から都内の急性期病院に言語聴覚士として勤務。認知症疾患医療センター内での、入院ケア、認知機能検査、認知症カフェの運営等、認知症のある方やご家族のケアに携わった豊富な経験をもつ。

2020年より医療法人バディにて認知症部門立ち上げ。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。ICTを活用した居宅支援「オンライン認知症ケアプラス®」、スターバックスとのコラボによる認知症カフェ「ウェルビーイングカフェ鎌倉」等の企画・運営を担当。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。