人の名前が出てこないのは認知症?

2026.02.24

 

「最近、人の名前が出てこなくて、これって認知症でしょうか・・・。」

 

もの忘れ外来でこのようなご相談を受ける事があります。

 

今回は、「固有名詞が出てこない」理由と、その対策についてお話ししていきます。

 

 

 

固有名詞が出てこない理由

まず、みなさん「りんご」という言葉から、何をイメージしますか?

 

「赤い」「甘酸っぱい」「果物」など・・・様々なイメージが浮かぶと思いますが、これらは全て意味をもつ、りんごの特徴(属性)です。「りんご」のような普通名詞といわれるものは、これら多くの属性と固く結びついている為、思い出しやすいといわれています。

 

 

次に「田中さん」という言葉から、何をイメージしますか?

 

特定の人物を思い描くことはあっても、「りんご」のような多様なイメージと結びつきにくいかと思います。このように人の名前等、固有名詞は、脳の中で孤立したラベルのような言葉として扱われています。

 

意味との結びつきが弱いために、とっさに思い出せない状態が起きやすく、それらは「語健忘(ごけんぼう)」と呼ばれます。語健忘とは、記憶から消えたわけではなく、別のふとしたタイミングで思い出せることもしばしばあります。

 

 

認知症との関連でいうと、固有名詞が出にくい事自体は大きな心配がいらない事が大半です。一方で、普通名詞が日常的に思い出せない場合や、「りんご」と聞いてその意味が分からない時などは、言語の障害に関連する認知症が隠れている可能性もあります。

 

 

 

固有名詞を思い出しやすくするには

では、このことを踏まえて、日常的に固有名詞を覚えやすくする方法について考えます。

 

心理学には「ベイカーベイカー効果」という用語があります。これは、「ベイカーさん」という人名は覚えにくいのに、「パン屋さん(baker)」という職業で覚えると覚えやすいというものです。「パン屋さん」は普通名詞なため、「パンをこねる」「パンの香り」などの意味が結びついてくるからです。このように、固有名詞にイメージを作り出し、覚えやすくアレンジをする事はひとつの方法といえます。

 

たとえば…

 

この効果は、固有名詞(人の名前など)を覚える際に、その名前に意味やイメージを結びつけることで記憶しやすくする心理学的な方法です。

 

 

ベイカーベイカー効果を使った名前の覚え方の具体例

  • 織田さん:歴史上の人物「織田信長」の顔や甲冑姿を思い浮かべながら覚える。
  • 千葉さん:日本地図の千葉県の形や、千葉県の名所(例えばディズニーランド)とリンクさせて覚える。
  • 佐藤さん:砂糖(さとう)をイメージし、甘いものやお菓子と関連付けて覚える。

 

このように、人の名前に意味やイメージを持たせることで、脳内の記憶ネットワークが強化され、思い出しやすくなります。よろしければ日常生活で試してみてください。

 

 

 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

前田先生

医療法人バディ 認知症部門部長 
前田 順子(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

2005年から都内の急性期病院に言語聴覚士として勤務。認知症疾患医療センター内での、入院ケア、認知機能検査、認知症カフェの運営等、認知症のある方やご家族のケアに携わった豊富な経験をもつ。

2020年より医療法人バディにて認知症部門立ち上げ。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。ICTを活用した居宅支援「オンライン認知症ケアプラス®」、スターバックスとのコラボによる認知症カフェ「ウェルビーイング☆カフェ鎌倉」等の企画・運営を担当。


 

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。