レビー小体型認知症について

2025.12.09

レビー小体型認知症は、認知症の原因疾患のうち約4〜5%を占め、アルツハイマー型認知症、血管性認知症に次いで3番目に多い疾患です。

 

今日は、レビー小体型認知症について、アルツハイマー型認知症との違いも交えながらご説明します。

 

 

発症のメカニズム

レビー小体型認知症の原因は、脳内にレビー小体という異常なタンパク質(主にα-シヌクレイン)が蓄積することです。レビー小体が脳の神経細胞の中に形成され、神経細胞の機能が障害されることで発症します。

 

有名なパーキンソン病では脳幹(のうかん)にレビー小体が集まるのに対し、レビー小体型認知症では大脳皮質(だいのうひしつ)の、中でも後頭葉を中心に集まることが特徴です。

 

 

 

症状 -前駆症状-

 

レビー小体型認知症の発症前には、以下のような特徴的な症状が見られることがあります。

  • レム睡眠行動異常症:睡眠中に大声で叫んだり、夢の内容に合わせて手足を激しく動かすなどの行動。
  • 嗅覚障害:匂いがしない、何の匂いかわからないといった嗅覚の低下。
  • 自律神経症状:発症数年前から便秘や起立性低血圧による立ちくらみなど。

 

症状 -主な症状-

 

次にレビー小体型認知症の主な症状についてご説明します。

 

・幻覚(幻視):幻覚とは実際には無い感覚を知覚することですが、レビー小体型認知症に特徴的な幻覚は主に「幻視」です。「部屋に知らない人がいる」「ベッドに子供がたくさんいる」「犬がいる」など、ご本人に、はっきりとに見え、それらはあまりにリアルに感じられる為に、実際に話しかけたり、「幻の来客」にお茶を出すなどの行動が見られることもあります。

 

・妄想:アルツハイマー型認知症の場合、記憶障害に起因した物取られ妄想(例:誰かが財布を盗んだ)が多い一方、レビー小体型認知症の場合は「家族が偽物である」といった誤認妄想や「夫が誰かと浮気をしている」といった嫉妬妄想など、視覚的な処理の問題や幻覚に関連した妄想が特徴です。

 

・パーキンソン症状:レビー小体の集まる場所や広がりによって、パーキンソン症状を併発する場合があります。

 

・自律神経症状:立ちくらみ、めまい、便秘、尿失禁、失神など、自律神経のコントロールの問題で起こることがあります。

 

これらの症状は、日、時間帯によって調子に波があるのが特徴です。穏やかで表情がはっきりしている時、起きているがぼんやりしている時など、症状の変動があるのもレビー小体型認知症の特徴です。

 

認知症というと、もの忘れのイメージがあるかと思いますが、レビー小体型認知症では、もの忘れはあっても、初期においてはアルツハイマー型認知症ほど目立たないこと、その一方で特徴的な前駆症状や幻視などが比較的早くみられることが、診察でのアルツハイマー型認知症との鑑別ポイントとなります。

 

また、薬物治療において、レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症に最も多く選択される治療薬は同じものですが、生活の中での困りごとや認知症ケアのポイントはかなり異なりますので、しっかり鑑別診断をして、それぞれの認知症に即した対応をしていくことが重要です。

 

 

 

 

 

■執筆者情報
この記事は、医療法人バディ公式LINE「ケアコミ」の内容を引用しております。

前田先生

医療法人バディ 認知症部門部長
前田 順子(言語聴覚士・認知症ケア専門士)

2005年から都内の急性期病院に言語聴覚士として勤務。認知症疾患医療センター内での、入院ケア、認知機能検査、認知症カフェの運営等、認知症のある方やご家族のケアに携わった豊富な経験をもつ。

2020年より医療法人バディにて認知症部門立ち上げ。コミュニケーションを主軸とした認知症の非薬物療法に取り組む。ICTを活用した居宅支援「オンライン認知症ケアプラス®」、スターバックスとのコラボによる認知症カフェ「ウェルビーイングカフェ鎌倉」等の企画・運営を担当。

バディ

医療法人バディ https://buddymedical.jp/

2019年設立。横浜市、鎌倉市に3つの脳外科クリニックと認知症部門を展開。2023年より、居宅介護支援事業、訪問リハビリ。2024年より訪問看護部門を開設。